「ホームページ、AIで5分でできるらしいよ」
「AIに任せれば外注いらず!」
「動画の通りやれば、初心者でも簡単」
こうしたコンテンツが、YouTubeにもブログ記事にも溢れています。実際に「ホームページ 作成 AI」で検索すると、検索結果の1ページ目には「おすすめツール11選比較」「無料5選」「最速で作れる8選」といった見出しが並びます。
僕は副業でWeb制作・運用を手がけている Novus Digital(ノバスデジタル) 代表のキュウと言います。日々、地方の中小企業の社長や個人事業主の方からホームページの相談を受けています。
その中で、ここ最近とくに増えてきた相談がこれです。
たぶん多くの社長が、こんな展開を体験しているのではないでしょうか。
夜、本業を終えてようやくPCの前に座る。「ホームページ AI」で検索する。検索結果には「最速5分でサイト完成!」と書かれた記事と動画がずらり。「これくらいなら自分でもできるか」と思って、紹介されていたツールに登録してみる。確かに、最初の数分は気持ちよく進む。質問に答えると、画面にきれいなデザインが出てくる。「すごいな、AI」と思う。
でも、そこから3週間ほど経つと、毎日の手元の作業が止まり始める。文章はAIが書いてくれたけど、自社の感じと違う。お問い合わせフォームから自分宛にメールが届かない。スマートフォンで見ると変な余白が出ている。ドメインってどう取るんだ? そもそも公開ボタンを押す前に何を確認すればいいんだ? 気づけば、貴重な平日の夜と週末を、ホームページの調整に消耗している。
正直に言います。「AIで5分」「外注いらず」を真に受けて自分でやろうとした経営者の多くは、痛い目を見ます。
誤解しないでほしいのは、僕はAIアンチではありません。むしろ AI には自分自身が課金して、毎日使い倒している側の人間です。仕事のスピードはAI以前と比べて、感覚として100倍くらいになりました。本気でそう思っています。
だからこそ言えるのです。AIは強力ですが、「AIに任せれば誰でも簡単にホームページが作れる」という言葉には、致命的な抜けがあると。
この記事では、検索結果の比較記事には書かれていない、もう一つの視点をお届けします。
- 「AIで5分でホームページ」は本当か? 検索結果に並ぶ記事の正体
- あなたの時給はいくらですか? 時給×時間で計算する「AIホームページ自作」の本当の費用対効果
- 1年半基礎を学んでからAIに課金して震えた僕が見た、基礎なき独学者がハマる3つの罠
- それでもAIで挑戦したい社長へ|判断の3軸と、相談の温度感
読み終わる頃には、「AIで自分で作る」「プロに任せる」「AI+プロのハイブリッドで進める」のうち、自分の事業にとってどれが一番安い選択かが、自分の言葉で説明できるようになっているはずです。
「ホームページはAIで5分でできる」は本当か?— 検索1ページ目に並ぶ記事の正体
まず、検索結果の話からします。「ホームページ 作成 AI」で検索すると、上位に出てくる記事には共通点があります。ほとんどが「ツール比較・おすすめN選」型の記事です。
11選、10選、8選、7選、5選。中身を読み比べると、紹介されているサービス名は微妙に違っても、書かれている構成はほぼ同じです。「AIで作るメリット」「ツール一覧表」「選び方ポイント」「無料・有料の違い」「まとめ」。
このセクションでは、この検索結果の構造そのものを冷静に見つめ直していきます。

「AIで簡単」「5分」「外注いらず」系コンテンツに違和感を覚える本当の理由
正直、僕自身が一番違和感を持っているのがここです。
「AIで簡単に!」「5分でできる!」「AIで外注いらず!」
—— こういう言葉が並ぶ動画や記事を見るたび、心の中で「実際に自分で全部やってみたら、本当にそうなりますか?」と問いたくなります。
たとえば、ある業種のホームページを作る場面を想像してください。AIツールにいくつか質問を答えると、5分でデザインが出てきます。確かに「画面に何かが表示される」というところまでは、本当に5分で到達できます。ここは嘘ではありません。
ただ、そこから先が長いのです。
業種に合わせた文章を一から考え直す。自社の強みや実績を整理して入れ込む。お客様の声を載せる。問い合わせフォームを動かす。スマートフォンでもきれいに見えるか1ページずつ確認する。SSL証明書の設定、独自ドメインの設定、サーチコンソールやGoogleアナリティクスの登録。
そして肝心の 「で、誰に何を伝えて、どう動いてもらうサイトにしたいんでしたっけ?」 という、いわゆる設計の部分。
これらをすべて自分でやって、ようやく「ビジネスに使えるホームページ」になります。「AIで5分」のあとに、見えていない作業がずらりと並んでいるのです。
これは「Webプロが意地悪を言っている」のではありません。実際のホームページ制作の現場で、毎回欠かさず発生している作業です。
「5分でできる」と言っている記事は、嘘をついているわけではありません。単に「画面にデザインが表示されるまで」しか語っていないだけなのです。
例えるなら、「材料を切ったら料理は5分で完成」と言っているようなものです。火を通す工程と盛り付けと味付けと、片付けまで含めると、全然5分では終わりません。
違和感の正体はここにあります。「AIで簡単」を語る人たちは、ホームページを「ビジネスのために作って運用するもの」ではなく、「画面に映ったらゴール」と捉えている。だから「5分」が成立してしまうのです。
地方で長年事業を続けてこられた社長ほど、この感覚は理解できるはずです。看板を一枚作ること、チラシを一枚作ること、店舗を一軒立ち上げること、どれも「形ができたら終わり」ではないですよね。お客様に届いて、来店していただいて、ご注文いただいて、リピートしていただく。そこまで含めて初めて「事業に効いた」と言えるはずです。
ホームページもまったく同じです。
もう少し具体的に書いてみます。先日、ある中小企業の社長から「AIで作ってみたんだけど、見てくれる?」と相談を受けました。画面には、確かに「ホームページっぽいもの」が表示されていました。色合いも整っていて、メニューも揃っていて、見た目だけ見れば、3年前の他社サイトより全然きれいです。
ところが、よく見るとお問い合わせフォームを押しても何も起きない。スマートフォンで見るとレイアウトが崩れている。会社の電話番号が古いまま。お客様の声の欄には、AIが勝手に作った「サンプル様」「テスト太郎」の名前が残ったまま。「これ、本当に公開して大丈夫ですか?」と思わず聞き返したことがあります。
その社長は、悪気があったわけではありません。AIが「完成しました」と言うから、本当に完成したと思っただけです。完成と公開可能の差を、誰も教えてくれなかった。
「AIで簡単に作れる」と語る記事や動画は、こういう細部の話まではしません。当然です。動画のサムネイルに「電話番号の差し替えとフォーム動作確認の徹底解説!」と書いても、誰もクリックしないからです。
結果、社長は「画面に映っているけど中身は空っぽ」のサイトを抱えて、何が問題なのかわからないまま立ち止まることになります。
11選・10選・8選… 比較記事ばかりが上位を占める検索結果の構造
もう一つ、検索結果について触れておきたいことがあります。
「ホームページ 作成 AI」で検索したとき、上位に出てくるのが「おすすめN選」「比較ランキング」型の記事ばかりなのには、理由があります。
身も蓋もない話をします。これらの記事の多くは、紹介しているAIツールから紹介料が入る仕組みを前提に書かれています。
もちろん、紹介料モデル自体が悪いわけではありません。僕も Novus Digital のサイトで紹介リンクを貼ることはありますし、紹介する側がきちんと検証していれば、読者にとっても有益な記事になります。
ただ、構造として理解しておくと役に立つのです。
こうした記事は、構造上「ツールを使ってもらう」のがゴールです。だから、ツールを実際に使ってみて「思っていたのと違った」「全然集客につながらなかった」という、ユーザー目線の不都合な体験談はあまり詳しく書かれません。書かれていても、注意点として軽く触れられる程度です。
もちろん、優良な比較記事もあります。実際にツールを契約して、自分のお金で試して、画面のスクリーンショット付きで「ここはいい」「ここは無理」と書いている記事は信頼できます。
見分け方を一つお伝えしておきます。「メリット」と「デメリット」のボリュームを比べてみてください。デメリットを正直に書いている記事ほど、執筆者が実際に使ったうえで書いている可能性が高いです。逆に、デメリットがほとんど書かれていない、もしくは「強いて言えば」程度しか触れられていない記事は、紹介ありきで書かれている可能性が高くなります。
もう一つ、「執筆者の名前と顔が出ているか」も見ておきましょう。匿名のメディア記事より、特定の人物が顔と経歴をさらして書いている記事のほうが、内容に責任を持っている分、当たり前ですが信頼度が上がります。
ただ、地方の中小企業の社長が忙しい中で見極めるのは、なかなか難しい。検索1ページ目を上から下まで読んでも、読み終わったあとに残る感覚は「結局どれを選べばいいのかわからない」。これが多くの社長に起きている現象です。
ここから先の章では、比較記事には載っていない視点でAIホームページ制作を眺め直してみます。とくに「あなたの時給×総作業時間」という、経営者なら毎日使っている当たり前の物差しで計算してみると、意外な結論が見えてきます。
付け加えると、「自分でやる」という選択肢を試すのに、これ以上ない時代になっているのも事実です。AI登場前なら、ホームページを自作するのに半年〜1年の学習が必要でした。今は、AIの力を借りれば、未経験者でも数ヶ月で形にできるところまで来ています。
ただ、それは「学習コストが下がった」だけで、「考えるコストが消えた」わけではありません。考えるコスト ——誰に、何を、どう動いてもらうかを組み立てる頭の作業 —— は、AIを使っても、社長が自分で背負う部分です。比較記事を10本読んでも、ここを誰かが代わりにやってくれることはありません。
時給で計算する「AIホームページ制作」の本当の費用対効果
このセクションは、本記事のなかで一番しっかり読んでほしい章です。
多くの「AIホームページ作成」系の記事には、「あなたの時給で計算したらいくらになるか」という視点が、ほとんど載っていません。
でも、地方で事業を回してきた社長なら、毎日のように頭の中で計算しているはずです。「この打ち合わせに2時間使う価値はあるか」「この事務作業を自分でやると、いくら売上を逃すか」。この感覚を、ホームページ制作にも適用するだけで、見える景色が一気に変わります。

あなたの時給はいくらですか? 経営者の時給を出す簡単な計算式
まず、自分の時給を出してみましょう。難しいことは何もありません。
ためしに、いくつかのパターンで計算してみます。
例1:年間純利益500万円・年間2,000時間稼働の社長
500万 ÷ 2,000時間 = 時給 約2,500円
例2:年間純利益800万円・年間2,400時間稼働の社長
800万 ÷ 2,400時間 = 時給 約3,300円
例3:年間純利益1,200万円・年間2,500時間稼働の社長
1,200万 ÷ 2,500時間 = 時給 約4,800円
「いやいや、もっと夜遅くまで働いてるから稼働時間はこんなもんじゃない」という社長も多いと思います。実態に合わせて計算してみてください。
大切なのは、この時給は『その時間に別の仕事をしていれば、本来稼げていたはずの金額』という意味だということです。経済学の用語で「機会費用」と呼ばれます。
たとえば、本来なら新規のお客様と打ち合わせをしているはずの時間で、AIにプロンプトを入力して試行錯誤していたら、その時間ぶんの売上は丸ごと失っていることになります。
もちろん、AIホームページ制作の時間がすべてムダになるわけではありません。学びにもなりますし、自社の事業を整理するきっかけにもなります。だからこそ、感情論ではなく 数字 で正面から見る価値があります。
飲食店の現場を10年以上経験していた頃、僕は集客に悩みながら店内施策からWeb施策まで手探りで取り組んできました。会社のホームページ制作も担当しましたが、忙しい現場の中ではリソースが足りず、当時の上司に「しょぼいけど無いよりマシか」と言われたのを今でも覚えています。
あのとき、もし自分の時給を計算していたら。「現場を回しながら片手間で作ったホームページ」が、どれほど割の悪い投資だったかすぐに気づけたはずです。当時は時給という発想すらなかったので、何十時間も使ってしまった結果、しょぼいものができただけ。
地方で頑張る社長に、同じ思いをしてほしくない。これが、僕がこの記事を書いている動機の一つです。
もう一つ、時給を計算するメリットがあります。「この作業は自分がやるべきか、誰かに任せるべきか」の判断が、めちゃくちゃ早くなることです。
たとえば時給3,300円の社長が、自分で給与計算を月10時間やっているとします。月のコストは33,000円。一方で、税理士事務所や会計クラウドの記帳代行に依頼すると、月15,000〜25,000円で済むことが多いです。自分でやる方が高いのです。それなのに「経費を浮かせよう」と思って自分でやり続けている社長は、地方ではかなり多くいらっしゃいます。
ホームページ制作も、まったく同じ構造です。「無料で作れる!」「外注いらず!」というキャッチコピーは、直接費用しか見ていない計算を前提にしています。経営者の時給で計算した瞬間、その前提は崩れます。
これは、地方で何十年も事業を回してきた社長ほど、肌感覚として理解されている方が多いです。「自分の時間を何に使うか」「人に頼める仕事は人に頼む」という判断を、毎日のように積み重ねてきたはずです。ホームページ制作にも、その判断軸を持ち込んでいただきたい、という話です。
AIでホームページを「公開できる状態」まで持っていく総作業時間の現実
では、AIで自分のホームページを「公開できる状態」まで持っていくのに、本当はどれくらいの時間がかかるのでしょうか。
結論から言います。未経験の社長が、AIだけを頼りに、本当に集客につながる5ページ程度の小規模ホームページを公開できる状態まで持っていくと、概ね30〜80時間かかります。
「30時間」は、本業がそれほど忙しくなく、PC操作にも比較的慣れていて、文章を書くのも苦ではない方の目安。「80時間」は、本業が忙しく、PC操作にも苦手意識があり、設計から悩みながら進める方の目安です。
内訳を、僕がいつもクライアントの前で書き出している順番でご紹介します。
ただし、これは「順調に進んだ場合」の話です。実態はもっと厳しいことも、僕の経験から正直にお伝えしておきます。
こういう詰まりが、未経験者には本当にゴロゴロ起きます。
負のループに捕まると、たった一つのことを「できた」状態に持っていくのに、丸1週間かかることもあります。週末も平日の夜も、貴重なオフタイムを全部突っ込んで、たった1つの設定が完了しただけ。振り返ると笑うしかありません。
しかも、こういう詰まりにハマっている最中、AIに聞きまくることになります。AIが教えてくれた言葉の意味が分からないので、別途ググる。ググった先にまた知らない言葉が出てくる。再度ググる。本末転倒とは、まさにこういう状態のこと。
これは脅しではなく、僕自身がWeb制作を学び始めた頃に、何度も体験した実話です。今だからこそ笑い話にできますが、当時は本気で「もう無理かも」と何度も思いました。たぶん、未経験から自力でホームページを作ろうとしたことのある方には、ものすごく共感していただけるのではないでしょうか。
つまり、先ほど示した「30〜80時間」という総作業時間は、順調に進んだ場合の理論値です。実態は1.5〜2倍に膨れることも珍しくありません。最悪のケースで100〜150時間に達することも、地方の社長を見ていてよくあります。
ここに 「自分の時給」 を掛けてみてください。
例:時給3,300円の社長が60時間使った場合 = 機会費用 198,000円
例:時給4,800円の社長が60時間使った場合 = 機会費用 288,000円
例:時給4,800円の社長が、負のループにハマって120時間使った場合 = 機会費用 576,000円
これが、ぱっと見「無料」「格安」に見えていたAIホームページ自作の、本当の費用です。AIツールの月額料金(3,000〜10,000円程度)はここに加算されます。
もちろん「自分でやることで業務知識が深まる」「Webリテラシーが上がる」という副次効果はあります。学習目的なら大正解です。
ただ、「集客のための事業ツールを早く形にしたい」のであれば、機会費用を直視したうえで判断する必要があります。
もう一つ、内訳の中で僕がいつも「ここは特に重い」とお伝えしているのが、「生成→確認→修正のループ(10〜25時間)」です。AIがたたき台を出したあと、自分の事業の感じと違う箇所を一個ずつ直していく作業。これが、終わりが見えない泥沼になりやすい。
具体的には、AIが書いた文章を読んで「これは違う」と感じる→AIに修正指示を出す→出てきた修正がまた違う→指示を変えてもう一度→出てきた答えはまた微妙→と、30回〜100回ほどの調整ループを回すことになります。1回あたり10分かかるとして、50回で約8時間。これだけで丸1日です。
このループの最中、「もう、これでいいか」と妥協してしまう瞬間が必ず訪れます。妥協した結果、サイトの品質が60点で止まる。これがAI制作の最大の落とし穴の一つです。
プロに依頼した場合 vs 自分でAIで作った場合の機会費用比較
では、プロに依頼した場合と比較してみましょう。地方の中小企業向けの一般的な相場感です。
仮に、地方のフリーランスや中堅制作会社に40万円で依頼した場合と、自分でAIで作った場合を、機会費用込みで比較してみます。
| 項目 | 自分でAIで作る | プロに依頼 |
|---|---|---|
| 直接費用 | 3,000〜10,000円/月 | 40万円(一括 or 分割) |
| 自分の作業時間 | 30〜80時間 | 5〜15時間(打ち合わせ/素材提供のみ) |
| 機会費用(時給4,800円) | 14万4,000〜38万4,000円 | 2万4,000〜7万2,000円 |
| 実質コスト | 約15〜40万円 | 約42〜47万円 |
| 公開までの期間 | 3〜6ヶ月(合間に進めるため) | 1〜2ヶ月 |
| 設計品質 | 自分の理解の範囲内 | プロの設計知見が入る |
こうして並べてみると、「無料・格安」に見えていたAI自作と、プロ依頼の実質コスト差は、思ったほど大きくないことがわかります。
とくに公開までの期間が 3〜6ヶ月 vs 1〜2ヶ月 という違いは大きい。地方の中小企業ほど、ホームページが完成して稼働するまでの期間に取り逃した売上が、最後にずっしり効いてきます。
AIエージェントに最初に課金したとき、僕は月の利用料が思ったより高くて絶望しました。最初に試した別のAIエージェントは、軽快に壁打ちしていたらわずか1〜2時間で利用制限に到達。出てきた有料課金案内の月額が、なんと約36,000円。個人で副業を回していた当時の身には、痛すぎる金額でした。
このとき、僕は思いました。「これって、自分の時給で換算したらどうなんだろう?」と。
結局、ChatGPT Plus と Claude のサブスクで月7,000円程度に切り替えて、エージェント部分は別の道を探しました。直接費用で見たら確かに1万円以下に収まりました。ただ、最初の試行錯誤に使った時間は、自分の時給で計算するとしっかり何万円ぶんも消費していたわけです。
この経験で、僕は「AIの利用料」だけを見ていると、本当のコストを見落とすことを身をもって知りました。地方の社長にぜひ持ち帰ってほしい視点です。
もう一つ、見落とされがちな機会費用があります。「公開後に発生する追加対応の時間」です。AIで作ったサイトは、検索エンジンに正しく認識されないことが多く、公開後に手作業でメタタグを直したり、画像のファイル名を整えたりする作業が発生します。これが地味にきついのです。
仮に、月に10時間ずつこうした追加対応に取られたとします。時給4,800円の社長なら、月48,000円の機会費用です。年間で576,000円。プロに依頼した場合の制作費が40万円だったとすると、公開して1年以内に、自作の追加対応コストが外注費を超えてしまう計算になります。
これは脅しではなく、僕が実際にクライアントから引き継ぎを受けるたびに目にしている現実です。「AIで作ってみたんですけど、運用がしんどくて」という相談で、サイトを引き継いでみると、構造が独特で修正に余計に時間がかかる、というケースは少なくありません。
「直接費用」だけ見ると、AIで自分で作るほうが圧倒的に安く見えます。でも「直接費用+機会費用+運用コスト」で見ると、地方の中小企業の社長にとっては、プロに任せたほうが結果的に安い、というケースが圧倒的に多いのです。
基礎なき独学者がハマる「AIホームページ制作」3つの罠
ここからは、もう一つ大事な視点に進みます。「基礎なき独学」でAIに頼ることが、なぜ危険かという話です。
これは、僕自身が遠回りしながら身につけた感覚です。最初に「AIってすごい!」と感動したそのあと、何度も痛い目を見ました。具体的なエピソードを交えてお話しします。

罠①「AIが堂々と間違った答えを言ってくる」リアル
最初に挙げたいのが、これです。AIは、間違った答えを、いかにも正しいかのような顔で堂々と返してきます。
少し前、僕はまったくの畑違いのスキルに手を出したことがありました。「この動画の通りにすればあなたもたった10分でできる!」といううたい文句に踊らされて、未経験の領域のチュートリアル動画を見始めたのです。
最初の数分は順調でした。動画と同じ画面が出て、動画の通りにクリックして、動画の通りに進む。「これなら自分にもできるじゃん」と気をよくしたのが、運の尽きでした。
途中から、動画の画面と僕の画面が違ってきたのです。同じ操作をしているはずなのに、動画では次のステップに進む。僕の画面ではエラーが出る。「そんなコメントどこにあるんだ?」「言ってること違うんだけど?」
ここでAIに聞きました。「○○の画面で△△が出ない場合、どうすればいい?」
AIの回答は自信満々でした。「それは××です。△△の設定を確認してください。」
その通りに確認しても、まったく解決しません。もう一度AIに聞き直します。「いやだから、それができないんだって」
AIは涼しい顔で別の答えを返してきます。「間違いなく◇◇です!」
セカンドオピニオンならぬ、サードオピニオンも試しました。別のAIに同じ質問を投げてみたのです。返ってきた答えは、最初のAIともまた違う、第三の答え。三つのAIに聞いて、三つとも違う答え。しかも全員、堂々と「間違いなく」と言ってくる。
これが、AIに「丸投げ」した結果です。
ホームページ制作でも、まったく同じことが起きます。「このコードを修正したい」「このデザインを直したい」「この設定がおかしい」 と AI に質問しても、それっぽい答えが返ってきます。基礎がない人は、その答えが正しいか間違っているか判別できません。
結果、AIの言う通りに修正したらサイト全体が壊れる。さらに直そうとして、また別のAIに聞いて、またおかしくなる。気づいたら、もとに戻すことすらできない状態になっています。
これは脅しでも誇張でもありません。中小企業の社長から「AIで作り始めたんですけど、おかしくなってしまって」という相談は、実際に増え続けています。
もう一つ、AIの嘘で困ったエピソードを書いておきます。少し前に、地方の整体院の経営者の方から「AIで作ったページの一部を直したいんだけど、どうすればいい?」と相談を受けました。「AIに聞いたら『この一行を消せばいい』と言うので消したら、ページ全体が真っ白になっちゃって」。
画面を見せていただくと、確かに真っ白でした。AIが指示した「この一行」を消したことで、その下のすべてのコードが正しく解釈されなくなっていたのです。HTMLというのは、入れ子の構造で書かれていて、一行消すと全体が崩れることがあるのです。
その経営者は何の悪気もなくAIの指示通りに動いただけです。でも、その結果、お問い合わせの電話番号が表示されていない時間が、推定で3日間続いていました。3日間、お客様が電話したくてもできない状態。これがどれだけの売上機会を逃していたかは、想像するだけでぞっとします。
修復は1時間ほどで終わりました。バックアップから戻して、AIが指示した修正を別の安全な方法で書き直しました。でもこの1時間の修復作業は、本来必要なかった時間です。AIの嘘を見抜けなかったコストとして、社長の時間と機会を奪っていきました。
罠② 1年半基礎を学んだ僕が、AI課金で「震えた」本当の理由
次の罠は、罠①と表裏一体です。「基礎ありきのAI」と「基礎なきAI」では、結果がまったく違うという話です。
僕がWeb制作を学び始めた頃、当時すでにChatGPTの名前を聞かない日はないくらい、世の中の人たちはAIを使い始めていました。それでも僕は、最初の1年半はあえてAIには頼らず、自力で基礎を積みました。
理由はシンプルでした。「最初からAIに頼っていたら、自分の実力がつかないまま、頼り続けるしかなくなる」と本能的に感じたからです。
HTMLとCSSを手で書きました。JavaScriptで動きをつけてみました。WordPressのテンプレートをカスタマイズしました。Photoshop と Illustrator も触りました。LINE構築も、ステップメールも、ステップLINEも、ビジネスプロフィール構築も、Googleアナリティクスもサーチコンソールも、一つずつ自分の手で覚えました。
ぶっちゃけ、しんどかったです。何度もエラーで詰まりました。動画の通りにやっても画面が違うことなんて山ほどあって、毎日のように「なんでこれが動かないんだ?」と頭を抱えていました。
そして1年半が経ったある日、満を持してChatGPTに課金してみました。
震えました。マジで震えました。
自分の仕事のスピードが、感覚として10倍。いや、それ以上。AIが返してくる答えを見て「あ、これは合ってる」「ここは違う、こっちが正しい」「これは惜しいな、こう修正しよう」と即座に判断できる。基礎があるから、AIの答えを取捨選択できるのです。
そのあとAIエージェントを使い始めたら、さらに10倍。AI を使わなかった2年前の僕と比べたら、感覚として100倍の仕事量を、100倍のスピードでこなせるようになっています。
もう一度書きます。これは「基礎」があったからです。
具体的に話します。たとえば、AIに「このページのデザインをもう少し信頼感のある雰囲気にして」と頼むとします。AIが返してきた答えに対して、基礎がない人は「言われた通りに置き換える」しかありません。基礎がある人は「この提案の中で、コーポレートカラーは残したい」「この余白の取り方はNG、もう少し詰めて」「フォントの太さはここだけ強くしたい」と、自分の判断で取捨選択ができます。
これが10倍速の正体です。AIが100点満点の答えを返してくることは、まずありません。だいたい60〜80点の答えが返ってきます。その60〜80点の答えに、自分の20〜40点ぶんの判断を足して、95点以上に持っていくのがAI活用の本質です。
基礎がない人は、60点の答えを100点だと思い込んで、そのまま採用してしまいます。だから、最終的に出来上がるサイトも60点止まり。「なぜか他社のホームページとあまり差別化できない」「お問い合わせが来ない」という結果に直結します。
もう一つ、僕がAIに震えた具体例を書いておきます。Web制作の現場で、HTMLとCSSの修正をAIにお願いすると、僕は3秒で「あ、この答えは合ってる」「この答えは間違っている」と判断できます。なぜなら、HTML/CSSを1年半、自分の手で書いてきたからです。
これは、料理の味見と同じです。何百回も鍋を振ってきた料理人は、ひと口味見すれば「塩が足りない」「煮込みが足りない」と即判断できます。料理を一度もしたことがない人が、AIに「このレシピで作って」と頼んでも、出てきた料理が美味しいかどうか自体、判断できません。
AIホームページ制作も、構造的にこれと同じなのです。基礎を持つ人にとってAIは魔法の杖、基礎を持たない人にとってAIは精度6割の予言者です。同じツールでも、使う人の基礎次第で結果はまったく違ってきます。
AIは、すでに知っていることを10倍速で実行する道具としては、最強です。一方で、知らないことを「学びながら」進めようとする道具としては、危険な部分も多いのです。
「ホームページ 作成 AI」で検索する社長の多くは、ホームページ制作についての基礎を体系的に学んだ経験はないはずです。それは当然です。本業で忙しいですから。
その状態でAIだけを頼りにホームページを作ろうとすると、罠①で書いた「AIの嘘を見抜けない」状態と、罠②の「基礎なきAI活用」が同時に発生します。これが、多くの社長がハマる二重の落とし穴です。
罠③ 「画面で見える」と「ビジネスに効く」は天と地ほど差がある
3つ目の罠が、もっとも見落とされがちで、かつ社長の事業に一番ダメージを与える罠です。
「画面に見える」と「ビジネスに効く」は、天と地ほどの差があります。
AIで生成したホームページは、画面で見ると、それっぽい見た目になります。色もきれい、写真もそれなり、文章も読める。「ちゃんとした会社のホームページ」っぽく見えます。
でも、ここに大きな落とし穴があります。「ちゃんとした会社のホームページっぽく見える」と「集客につながるホームページ」は、まったく別の生き物なのです。
地方の体育会系の社長で、「3年前にホームページ作ったけど、お問い合わせ、ゼロやでぇ」とぼやかれた方がいらっしゃいました。サイトを見せていただいたら、見た目は普通にきれいでした。ただ、サイト構造を覗いてみると、「誰に」「何を」「どう動いてもらうか」の設計がまったく入っていなかったのです。
会社の沿革、事業内容、所在地、電話番号。情報としては揃っている。でも、お客様が読み進めて「あ、ここに相談してみよう」と思う流れがない。検索からたどり着いた人が、最初の画面で帰ってしまうサイト構造になっていました。
これは、3年前にAIで作ったわけではありません。普通の制作会社が作っても起こります。でも、AIで自動生成すると、この問題は何倍も発生しやすいのです。
なぜなら、AIは入力された情報をベースに、平均的に整った見た目を出すのは得意でも、「あなたの事業の理想のお客様は誰で、その人がサイトに辿り着いたとき、どういう感情の流れで問い合わせまで進むか」を、あなたの事業独自の文脈で設計するのは、まだ非常に苦手だからです。
地方で長年事業をされてきた社長ほど、これは肌で理解できる感覚だと思います。チラシ一枚を作っても、看板一枚を立てても「読んだ人がどう動くか」を考えて作りますよね。ホームページもまったく同じなのです。
ところが、AIだけで作ろうとすると、この「動かす設計」の部分がすっぽり抜け落ちる。なぜなら、AIに「設計してください」と頼んでも、AIはあなたの事業のリアルを知らないからです。日々のお客様との会話、地域の特性、競合との関係性、社長自身の人柄や想い ——これらは、AIのデータベースの外にある情報です。
結果、「画面はきれい、でもお問い合わせは1件も来ない」というサイトが、地方で量産されています。これが、AIホームページ制作で社長が踏む3つ目の罠です。
もう一つ、対比的なエピソードを紹介させてください。先日、岡山県内の小さな工務店の社長から、こんなお話を伺いました。「ホームページから問い合わせが3件あって、3件とも成約したんです」。
そのサイトは、AIで作ったわけでも、何百万円もかけて作ったわけでもありません。地方の小さな制作会社に依頼した、ごく普通のホームページです。ただ、最初の打ち合わせに 3時間 かけて、「誰に・何を・どう感じてほしいか」を社長と制作担当が一緒に書き出した、というのです。
その3時間で固めた内容を、サイト全体に染み込ませた結果、お問い合わせの段階で「もうこの会社にお願いしようと決めて電話してきた人」しか来なくなった。だから3件問い合わせ、3件成約。
このサイトをもしAIだけで作っていたら、この最初の3時間が抜け落ちていたはずです。AIに「工務店のホームページを作って」と頼んでも、その社長と地域の関係性、過去のお客様の声の質感、断る仕事と引き受ける仕事の線引き、ここまでは引き出してくれません。
「画面で見える」サイトと「ビジネスに効く」サイトの違いは、画面に映る前の3時間に、誰が何を考えたかに集約されます。これがAI制作の最大の弱点であり、社長が手放してはいけない部分でもあります。
それでもAIで挑戦したい社長へ|判断の3軸と、相談の温度感
ここまでけっこう厳しいことを書いてきましたが、僕は「AIホームページ制作はやめておきましょう」と言いたいわけではありません。
むしろ、AIで自分のホームページに挑戦しようと考えている社長は、それだけで素晴らしいと思っています。新しい道具を使いこなそうとする姿勢は、これからの経営者にとって絶対的な武器になります。
このセクションでは、「自分でAIで挑戦すべき社長」と「プロに任せるべき社長」を分ける3つの判断軸と、もし行き詰まったときの相談の温度感をお伝えします。

自分でやるべき社長/プロに任せるべき社長 — 3つの判断チェック
まずは、自分のスタンスを冷静にチェックしてみましょう。以下の3つの軸で、自分の事業と性格を眺めてみてください。
3つの軸で自分を眺めて、「自分でやる側」に2つ以上当てはまる方は、ぜひAIで挑戦してみてください。応援しています。「プロに任せる側」に2つ以上当てはまる方は、無理せず誰かに相談したほうが早く・安く・確実にゴールに辿り着けます。
具体的なイメージで考えてみましょう。たとえば、年間純利益600万円・繁忙期と閑散期がはっきりしている地方の建築関連の社長を想定します。閑散期に月60時間ほど確保できそうで、過去にWordPressを少しだけ触ったことがあり、ホームページは「お客様への安心感の証として置きたい」目的。この社長は3つの軸でほぼ全部「自分でやる側」に該当するので、AI挑戦が向いています。
逆に、年間純利益1,200万円・年中お客様対応に追われている美容系サロンの社長で、PCはほぼ使わずスマートフォンメインで仕事を回し、ホームページからの直接予約を狙いたい方。この場合は3つの軸で全部「プロに任せる側」になるので、迷わず外注したほうが、機会費用も成果も両面で得をします。
「どっちにも当てはまる」「迷う」という方は、後ろの方の章で書いている「AIに任せていい部分と、社長が手放してはいけない部分」を読んでみてください。役割を分けるという、第三の選択肢があります。
実は、地方の中小企業のホームページ案件で一番多いのが、この第三の道です。社長が「2割の核」を自分の言葉で固めて、残り8割の実装はプロまたはAIに任せる。完全自作でも完全外注でもない、ハイブリッド型のやり方です。これがうまく回ると、費用も時間も最小限で、それでいて成果につながるサイトに辿り着けます。
AIに任せていい領域と、社長が手放してはいけない領域
「自分でやる」か「丸投げで任せる」かの二択ではありません。実は、AIに任せていい部分と、社長が絶対に手放してはいけない部分を分けて考えるのが、一番賢いやり方です。
大ざっぱに言うと、AIに任せていいのは「実装作業の8割」、社長が手放してはいけないのは「事業の核を表現する2割」です。
この線引きについて、もっと深く知りたい方は別の記事で詳しく書いています。「AIに任せていい8割と、手放してはいけない2割」を、業種別にケース付きで解説しているので、自分の事業に当てはめて考えやすいはずです。
もしAIで自分のホームページを作るなら、「2割の核」を自分の言葉で固めてから、残り8割をAIに手伝わせる。この順番を守るだけで、結果はまったく違ってきます。
逆に、最初に「2割の核」を固めずに、いきなりAIに「ホームページを作って」と頼むと、見た目はそれっぽいけれど、自分の事業の魂が入っていない、どこにでもある量産型の何かが出来上がります。これが「AIで作ったけど、お問い合わせが来ない」サイトの正体です。
もう少し具体的に、業種別の例を挙げてみます。整体院の社長が「2割の核」を自分で固めるとは、こういうことです。
この5つを社長が自分の言葉で固めれば、AIに「これをベースにトップページの文章を書いて」と頼んだときに、平均的な「整体院っぽい文章」ではなく、この院だけの言葉が出てきます。AIは下書きを作る道具として、ものすごく使えます。
逆に、この5つを固めずに「整体院のホームページを作って」と頼むと、AIは過去のデータから平均的な整体院のトーンの文章を生成します。読んでも何も心が動かない、量産型のサイトが出来上がります。
もう一つ大事なポイントがあります。AIをどんなに使い慣れても、AIに「正しく任せる」スキルは、別途身につける必要があります。AIに依頼するときの言語化、戻ってきた答えの判断、修正の指示。これは経営者がスタッフに仕事を任せるスキルと、本質的にはまったく同じです。
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「自分でやる派」も「プロに任せる派」も、最終的に『AIに正しく任せる経営者』が、これからのWeb活用で勝ち残っていくことになるはずです。
最後に。Novus Digital は、「大手Web制作会社についていけない・相手にしてもらえない地方の中小企業経営者の駆け込み寺」でありたいと思って活動しています。AIで自分でやる方も、プロに任せる方も、ハイブリッドで進める方も、それぞれの判断を尊重します。
「AIで5分でできる」と書かれた記事に踊らされず、自分の時給で計算して、自分の事業に一番効く選択をしてください。それがこの記事で一番お伝えしたかったことです。
ホームページの本当の目的は、画面に表示されることではなく、理想のお客様と出会って、事業が回ることです。 AIはその手段の一つにすぎません。
判断の途中で迷ったら、いつでも公式LINEで声をかけてください。お話を聞かせていただきます。
記事のまとめ:判断の物差しを「直接費用」から「時給×時間+設計品質」へ
長くなったので、この記事の要点をまとめます。
「ホームページ 作成 AI」で検索してこの記事に辿り着いた社長の方が、「AIで5分でできる」を真に受けて時間を消耗するのではなく、自分の時給×時間で計算して、自分の事業に一番効く選択をする。それを応援するために書きました。
AIは、これからの中小企業の経営にとって、間違いなく強力な武器になります。だからこそ、最初のボタンを掛け違えないことが、すごく大事なのです。
長文を最後までお読みいただき、ありがとうございました。あなたの事業のホームページが、画面に映るだけのものではなく、お客様と出会って事業が回る道具になることを、心から願っています。

