「ホームページ作ったほうがええよ、って何人にも言われてのう。じゃけど、なんやかんやで3年経ってまうたんじゃ」
そう言って、僕の前で苦笑いした社長がいました。岡山県内では誰もが知る、それなりの規模の会社の社長さんです。実績も人柄も申し分ない。地域から愛されている。でも、ホームページだけは、3年前からずっと「カミングスーン」のままだったのです。
こんにちは、岡山でNovus Digital(ノバスデジタル)という屋号でホームページ制作とWeb戦略設計の仕事をやっているキュウです。第2話以降のシリーズでお伝えする「ホームページ制作の順番」を、まずこの第1話で一緒に整理していきます。
もしあなたが、こんな状態のまま時間だけが過ぎていく感覚を持っているなら、この記事はあなたのためのものです。
- 「ホームページは作ったほうがええ」と周りから言われ続けている
- 業者の話も何社か聞いた。でも、決められない
- 同業の経営者仲間が「HPで集客できた」と話すたびに、焦る
- 身内に更新を任せようと思っていたが、結局誰も動けていない
- 「やった方がいいのは分かっとる、でも踏み出せん」が3ヶ月、半年、3年と続いている
結論から言います。「ホームページ 踏み出せない」のは、あなたの意志が弱いからじゃありません。
むしろ、踏み出せないまま立ち止まれている社長は、ある意味「危ない橋を渡らずに済んでいる」状態です。世の中には、勢いだけで業者に丸投げして、立派な「カミングスーンサイト」を量産してしまった社長が大量にいる。そっちのほうが、よほど深刻なんです。
この記事では、まず「踏み出せない」の正体を3つの視点から解きます。そのうえで、社長が今日から自分で動かせる「3つの整理」をお伝えし、最後にシリーズ第2話以降に繋がる「伴走型の最初の一歩」までご案内します。
──そのうえで、僕自身が「踏み出した先で何回も転んできた」体験談も、隠さずお話しします。Web屋としてカッコつけたい欲はありますが、第1話くらいは、僕の負けっぷりも含めて読んでいただきたいので。
──
📚 シリーズ「岡山発・Web導線整理」全5話
▶ 第1話(いま読んでいる記事):踏み出せない社長へ|ホームページ作ったほうがいい、と言われ続けて3年
・第2話:業者に丸投げして失敗する社長の共通点
・第3話:集客できないHPの9割は「入り口」ではなく「受け皿」の問題
・第4話:問い合わせが来るHPに共通する「安心の順番」
・第5話:社長が忙しくても進むホームページ制作の進め方
「ホームページ 踏み出せない」のは、社長の意志の問題じゃない
最初にお伝えしたいことが1つあります。「ホームページ 踏み出せない」と検索してこの記事に辿り着いたあなたが、もし「自分は決断力がないのかもしれない」「先延ばし癖があるのかもしれない」と感じているとしたら、それは違います。
踏み出せない社長の99%は、決断力の問題でつまずいているわけじゃありません。もっと別の、構造的な3つの罠にハマっているだけです。
ここから先は、その正体を3つの角度から解いていきます。最初に「ホームページを作ったあとに陥る最悪のパターン」を実例ベースで紹介し、次に「踏み出せない」の3つの正体を構造化し、最後に僕自身が「踏み出した先で何度も転んできた」物語をお話しします。読み終わるころには、踏み出せない自分を責める必要はなくなっているはずです。
立派な”カミングスーンサイト”を見て止まった日|岡山の体育会系社長の話
少し前の話になりますが、岡山県内では誰もが知る大手企業の社長さんから、ホームページの相談を受けたことがあります。固有名詞は伏せますが、業界では押しも押されぬ存在の会社です。
その社長さんが、第一声でこう仰いました。
岡山弁の「おえん」は「いけない」という意味です。「どうにかしないといけないのは分かっているけど、自分には扱えない」──この感覚を持っている社長さん、本当に多い。聞いていて、僕は「この方は誠実な人だな」と感じました。
そこで、その会社のホームページを実際に見せてもらいました。県内大手の会社さんなので、見た目は立派でした。シックなデザイン、企業理念、社員の集合写真、創業ストーリー。一見、「ちゃんとしているな」と感じさせる作りです。
──ただ、よく見ると、こうなっていました。
- サービス紹介ページの大半が「カミングスーン」のまま
- お知らせの最新記事は3年前。コロナ禍前の話題で止まっている
- どこを押せばお問い合わせフォームに飛べるのか、ぱっと見では分からない
- そもそもこのサイトが、お客様に「お問い合わせしてほしい」のか「ただ会社を知ってほしい」のかも、伝わってこない
- 会社の電話番号が、トップページのフッター以外には載っていない
これでは、せっかくサイトに辿り着いた人がいたとしても、何もできずに帰るしかない。立派な構えのお店に入ったら、商品が並んでいなくて、店員さんもいなくて、レジもない──そんな状態のホームページだったのです。
でも、僕が一番ぐっときたのは、社長さんが続けて口にされた言葉のほうでした。
これ、いま読んでいるあなたにも、似た構図がありませんか。「やったほうがいい」のは全員分かっている。でも、誰も決定的なボールを蹴り出せない。「全員が気になっているのに、誰も動けない状態」が静かに何年も続いていく。これが、地方の中小企業で本当によく起きている現実です。
面白いことに、この社長さんは「踏み出せていない」のではなく、「踏み出した結果、こうなっている」のです。何百万円かけて立派なサイトを作った。そこまでは踏み出した。でも、踏み出す方向と順番を間違えたから、3年動かないサイトが残ってしまった。
つまり、「踏み出せない」という言葉の裏には、ふたつの恐怖があります。1つは「踏み出さないまま、機を逃すかもしれない」という焦り。もう1つは「踏み出した結果、この社長みたいになるかもしれない」という、無自覚の警戒。あなたの「踏み出せなさ」は、後者の警戒が無意識に働いているサインかもしれません。これは、決して悪いことじゃない。むしろ大事な感覚です。
「ホームページ 踏み出せない」の正体は、選択肢過多×失敗恐怖×業界の設計不在
では、踏み出せない感覚の正体を、もう少し具体的に解いていきましょう。僕がこれまで何十人かの社長さんと話してきて、そのほぼ全員に共通していた構造が、3つあります。
結論から先にお伝えします。「ホームページ 踏み出せない」の正体は、3つの掛け算でできているのです。
⚠️ 「踏み出せない」の正体(3つの掛け算)
- 選択肢の過多──業者・料金・テンプレート・ツールが増えすぎて、決め手が消えた
- 失敗への恐怖──同業の失敗例が頭にある/自分の判断ミスを社員に見せたくない
- 業界側の「設計不在」──業者が「設計の話」を一緒にしてくれず、いきなり見積もりが来る
1つ目の「選択肢の過多」は、よく語られます。「制作会社にすべきかフリーランスにすべきか」「WordPressかWixかStudioか」「料金は20万か100万か500万か」──選び始めるとキリがない。社長さんが調べれば調べるほど、選択肢が増えていく。これは「決断疲労」と呼ばれる状態で、人間の脳は選択肢が増えすぎると判断を放棄しやすくなることが心理学的にも知られています。
2つ目の「失敗への恐怖」は、もっと根深いです。地方の社長さんは、地域の経営者ネットワークを通じて「同業のあそこのHP、ぜんぜん意味なかったらしいで」「100万かけたけど結局放置じゃと」みたいな失敗談を、よく耳にします。聞きたくなくても入ってくる。そういう情報が積み重なると、「自分はあの轍を踏みたくない」という防衛本能が、判断を鈍らせる方向に働きます。これは怠慢じゃない。経営者として極めて健全なリスク回避です。
そして、僕がいちばん声を大にして言いたい3つ目──「業界側の設計不在」。これが、実は一番社長さんを苦しめている要因だと思っています。
多くのWeb制作業者は、相談を受けた瞬間に「では、どんなデザインがお好みですか」「お見積もりはこちらになります」と話を進めます。社長の話を一切聞かないまま、いきなり「作る話」が始まるのです。社長は本当は「自分の会社のことをもっと聞いてほしい」「何のために作るのかを一緒に考えてほしい」と思っているのに、業者の側に「設計を一緒にする」という発想がないから、噛み合わない。
結果、社長は「あの業者は感じよかったけど、ピンとは来なかった」「何社か聞いたけど、どれも同じに見える」という状態になります。これ、社長の感覚が悪いんじゃない。業界の側が、設計を抜かして話しかけてきているから、選びようがないんです。
この3つは掛け算なので、どれか1つを潰せば、踏み出せる確率はぐっと上がります。逆に、3つ全部を解こうとすると詰みます。順番を間違えなければ、必ず動けるようになる。シリーズ第2話以降では、この3つを順番に解いていきます。今回の記事では、まず社長自身が今日から手を動かせる「3つの整理」を、次のH2で具体的に書きます。
僕も踏み出した先で何回も転んだ──飲食店、FX、トラック、副業実績ゼロの壁
ここまで読んで、「お前は分かったような顔をしているけど、自分は踏み出した経験ある側のくせに、何を言うとんじゃ」と感じた方もいるかもしれません。
正直に言います。僕は「踏み出した側」じゃなくて、「踏み出した先で、何回も派手に転んできた側」です。第1話の最後に、この話をしないとフェアじゃないので、少し長くなりますがお付き合いください。
僕の前職は、飲食店の店長でした。10年以上、現場でお客様の対応をしながら、アルバイトの採用と育成、販促、原価計算、シフト調整、全部やっていました。仕事自体は好きでしたが、ある時期から「自分の力で稼ぐ手段を、もう1本持っておきたい」と強く思うようになりました。理由は単純で、飲食業の店長というポジションが、組織の力学的に常にストレスを抱える構造だったからです。社員と店長と社長の権限関係が整理されていない中小企業あるあるで、心はずっと擦り減っていました。
そこで、副業として最初に手を出したのが、トレンドブログとアフィリエイトでした。が、あっさり挫折しました。次に手を出したのがFX(外国為替証拠金取引)です。これも勉強だけは死ぬほどして、本を50冊以上読みました。最初は2万円スタートで、確かに5万、10万、20万と増えていった瞬間もありました。
でも、ある日、為替が一気に逆方向に動いて、20万円が数時間で半分以下まで吹き飛んだ。あのときの感覚は今でも覚えています。お腹が急にゴロゴロ鳴り出して、トイレに駆け込みました。緊張で下痢するというのを生まれて初めて経験しました。40代で。
その後、もう一度勉強し直して、コロナ相場のときに5万円が400万円まで増えたこともあります。でも、勝てる時の喜びより、負ける時の怖さのほうが圧倒的に大きく、結局100万円ほどで撤退しました。残った50万円も、半年でじわじわ消えました。最終的に「自分でやるのはもう無理だ」と腹に落ちたあたりで、自動売買のプログラミング(MQL)を勉強し始めました。
その自動売買も、デモ環境では再現できても本番では稼げない、という壁にぶつかりました。FXは諦めました。並行して、現場で身体を使う物流系の仕事に転職していました。飲食業の人間関係ストレスから解放されたかったから。最初は小さい車から始めて、無事故記録を11ヶ月続けたところで、ほんの一瞬の気の緩みで初めての事故を起こしました。物としては大した金額ではなかったのに、ショックは大きかった。飲食店時代の「失敗してもリカバリーできる」感覚と、現場の「1ミスがそのまま責任になる」現実のギャップに、自分の中で何かが壊れる感覚がありました。
その後、車格の大きい車両に乗り換えても事故が続き、ある日、さらに大きい車種への昇格を打診されました。「また連続で事故ったら今度こそ立ち上がれない」という直感があったので、副業として始めかけていたWeb制作を本気で立ち上げる決意をして、退職を申し出ました。これが、ホームページ制作の仕事を本気で始めた瞬間です。
でも、Web制作も最初から順調だったわけじゃありません。コーポレートサイトを作って、ココナラに出品して、デモサイトもプロフィールも丁寧に作り込んだ。それなのに、最初の1件目が、どうしても来なかったのです。
当たり前の話ですが、実績ゼロの状態だと、誰も発注してくれません。レビューが1件もないお店に、誰がいきなり大金を払うでしょうか。僕も買い物するときは絶対レビュー見ます。だから、頭では分かっていたんです。でも、現実として「0件目から1件目への壁」にぶつかると、想像以上に心が折れます。
そこで、リアルな知り合いの中から1人、Instagramだけで商品を売っているオーナーさんに「無料でいいので、モニターとしてホームページを作らせてください」とお願いしました。気合いを入れて作ったので、そのオーナーさんはすごく喜んでくれて、「自分の言葉が、こんなふうに整理されるのか」と感動してくれました。──そこからやっと、僕の中での「実績ゼロ」が「実績1」になりました。
長い前置きでしたが、ここで言いたいのは1つです。「踏み出した先で転ぶこと」は、当たり前に起きます。僕も、何度も転んできました。でも、転びながらでも前に進めば、必ず景色は変わります。今あなたが「踏み出せない」と感じているのは、これらの転倒から自分を守ろうとしている、誠実な防衛反応です。だから、まず自分を責めるのをやめてほしい。そのうえで、転ばないための「3つの整理」を、次の章で一緒にやりましょう。
「ホームページ 踏み出せない」を解く、社長のための3つの整理

ここから先は、社長が今日からノート1冊で始められる「3つの整理」をお伝えします。業者と話す前に、これだけは社長自身の手で済ませておいてほしい。この3つが終わると、ホームページ 踏み出せない状態は、ほぼ自動的に終わります。
大事なのは「正解を出すこと」じゃありません。「自分の言葉で書き出すこと」です。書き出した瞬間、社長の頭の中だけにあったモヤモヤが、紙の上で一度形になります。形になれば、業者と共有できる。共有できれば、業者は社長の意図を踏まえて提案できる。これが、踏み出せない状態を抜ける唯一の道です。
では、順番に行きましょう。
整理①「何を実現したいのか」を社長の言葉で一文に
1つ目の整理は、たぶん一番難しいです。でも、これが決まらないと、その後のすべてが決まりません。「ホームページで、最終的に何を実現したいのか」を、社長自身の言葉で一文にまとめてください。
多くの社長さんが、ここで手が止まります。なぜなら、業者から「目的は何ですか?」と聞かれたとき、つい「集客」「採用」「ブランディング」みたいな、業界用語で答えてしまうからです。でも、これらの単語は中身が空っぽです。誰が何をどう感じればいいのかが、まったく入っていません。
そうじゃなくて、たとえばこんな書き方をします。
- 「うちの会社の名前を初めて見た人が、社長の人柄に惹かれて、一度会ってみたいと思う状態を作りたい」
- 「取引先の経営者が紹介で連れてくる新規見込み客が、来社前にこのサイトを見て『この会社なら任せられる』と確信している状態を作りたい」
- 「自社の現場で働く社員の家族が、サイトを見て『あなたの会社、いい会社ね』と言える状態を作りたい」
- 「採用面接に来る若い人が、面接前にこのサイトを読み込んで『この会社で働きたい』と思っている状態を作りたい」
こういう風に、「誰が」「サイトを見たあとに」「どんな状態になっているか」を一文で書く。これを「目的の言語化」と言います。集客でも採用でもブランディングでもなく、「サイトを見終わったあとの読者の感情・行動・確信」を1文で書き切ってください。
難しく感じる場合のコツが1つあります。「現状で、いちばん悔しい思いをしているシーン」を1つ思い浮かべてください。
たとえば、紹介で来てくれた見込み客が「ホームページがないから、ほかと比較できなくて」と帰ってしまったシーン。営業先で「ホームページのURLを教えてください」と言われて、答えに詰まったシーン。社員の子どもが学校で「お父さんの会社、調べたら何も出てこなかった」と言われたシーン。──これらの「悔しいシーン」を裏返すと、「ホームページで実現したい状態」が自然と見えてきます。
たとえば、僕が以前関わった、ある町の小さな車屋さんの話です。固有名詞は伏せますが、ご兄弟+メカニック1人で営んでいる、地域密着型のお店でした。最初に「なぜホームページを作っていないんですか」と聞いたら、こう答えてくれました。
この「悔しいシーン」を裏返すと、その車屋さんが本当に作りたかったホームページの目的が見えてきます。「自分たちの仕事の信念に共感してくれる、長く付き合えるお客さんと出会える状態」を作りたい、だったんです。同じ「車屋のホームページ」でも、目的が「クーポン目当ての客を集める」のと「信念に共感する客と長く付き合う」のとでは、作り方が180度変わります。
あなたの「悔しいシーン」は何ですか。それを裏返すと、どんな状態が見えますか。1文でいいので、ノートに書いてみてください。うまく書けなくていい。第4話で扱う「安心の順番」と直結する大事な作業なので、不器用でも自分の言葉で書くこと自体に意味があります。
もう少し補足させてください。整理①の一文を書くときに、ほとんどの社長さんが最初に書くのは、教科書的な「集客したい」「採用に困っているので何とかしたい」という抽象的な目的です。これは、いったんそのまま書いてください。書いたあとに、その文を声に出して読み上げてみてください。読み上げた瞬間、心がざわつかなければ、それは社長の本音じゃありません。逆に、ざわつく一文に出会うまで、書き直しを続けます。「もっと具体的に書ける気がする」「これじゃまだ薄い」と感じたら、その感覚に従って書き換える。これを5回ほど繰り返すと、必ず「これだ」という1文に辿り着きます。
言い換えると、整理①はテストの解答用紙ではなく、社長の心の中にある「これを実現できたらきっと胸が熱くなる」という像を、言葉に変換するワークです。だから、紙に向かう時間は最初の1回だけで終わりません。1日空けて読み返して、「あ、これじゃないな」と感じたら、また書く。社長の頭の中の像が形を持つまで、根気よく続ける。これが、踏み出すために絶対に省いてはいけない作業です。
整理②「誰に届けたいのか」を一人の顔で思い浮かべる
2つ目の整理は、整理①で書いた「実現したい状態」のなかに登場する「誰か」を、もっと具体的な一人の顔まで降ろす作業です。
これも、多くの社長さんがつまずきます。業者から「ターゲットは?」と聞かれて、「30代から60代の男女、地元の経営者層、年収500万以上」みたいな統計的な答え方をしてしまう。でも、統計的なターゲット定義からは、何1つ言葉が生まれません。サイトに書く文章も、業者が選ぶ写真も、デザインのテイストも、何1つ決まりません。
そうじゃなくて、社長の頭の中にいる「実在する一人」を、具体的に思い浮かべてください。
- 過去に発注してくれた取引先の社長で、いちばん「この人と仕事ができてよかった」と感じた人
- 採用してから「この子に来てもらえて本当に助かった」と感じた、特定の社員1人
- あなたが商工会や青年会議所で出会った、いちばん尊敬している経営者仲間
- 娘さんや息子さんが「お父さんの会社、すごいね」と言ってくれたシーン
こういう、名前と顔がはっきり浮かぶ「一人」を選んで、その人がサイトを見たときに、どんな表情で読み終わってほしいかを想像してみてください。「あの人なら、こういう言葉に頷いてくれる」「この事例なら、あの人の心に刺さる」──そういう感覚が出てきたら、整理②は半分終わっています。
これは、Webの仕事を始めて以来ずっと僕がやっているやり方ですが、「ペルソナ」という言葉は、社長さんとの打ち合わせでは絶対に使いません。代わりに「思い浮かぶ一人」「顔と名前が浮かぶ一人」と言います。なぜなら、ペルソナという業界用語は、社長の頭の中にある実在の一人を、わざわざ抽象化させてしまうからです。抽象化すると、言葉が薄まります。薄まった言葉は、サイトを見た人に届きません。
具体的に「あの人」を浮かべるコツは、こうです。
- 過去5年で、あなたが「この人とまた仕事がしたい」と心から思った相手を、3人ピックアップする
- その3人に共通する「ある状況」を1つ見つける(例:先代から会社を継いだ/本業の傍らで新規事業に挑戦している/家業を息子に譲る準備をしている、など)
- その状況にいる「もう1人の同じような人」を、サイトの読者として想定する
これだけで、ターゲットの具体度は10倍くらいになります。サイトに書くべき言葉、選ぶべき写真、出すべき事例が、自然と決まってくるのです。書きながら「あの人ならここで頷くな」「あの人ならこの言葉に違和感を覚えそうだな」という感覚が出てきたら、整理②は完了です。
余談ですが、僕自身、Novus Digitalを立ち上げる時に「誰に届けたいか」を1人の顔まで降ろしました。前職時代に出会った、ある経営者の方です。誠実で、社員思いで、地域に愛されていて、でも「ホームページや発信の話になると、急に黙って下を向いてしまう」方でした。あの方の顔を思い浮かべながら、屋号も、サービス内容も、価格設計も決めていきました。だから、Novus Digitalのサイトに書かれている言葉の温度感は、あの方の顔から逆算されたものです。1人の顔から逆算した言葉は、必ずほかの似た方にも届きます。これは僕が体験的に確信していることです。
整理③「いつ・誰が・どう更新するのか」を運用設計に落とす
3つ目の整理が、たぶん地味だけど、いちばん多くの社長さんが抜かしている整理です。「ホームページを公開したあと、いつ・誰が・どうやって更新するのか」を、業者と話す前に決めてください。
第1章で紹介した、立派なカミングスーンサイトの社長さんは、まさにここをすっ飛ばして失敗していました。「更新は身内に任せる」と決めたつもりだったけど、現実には身内も本業があって、優先順位が後ろになり、結果として誰も更新できなかった。サイトの「身内ボタン」は、見えない不発弾です。3年経った頃には、誰も話題にできなくなる。
運用設計とは、難しい話じゃありません。次の3つの問いに、社長自身が答えられればOKです。
📝 運用設計の3つの問い
- いつ更新するのか(毎月/四半期/半年に1回/随時)
- 誰が更新するのか(社長/社員Aさん/業者に外注/伴走支援を頼む)
- 何を更新するのか(お知らせ/施工事例/社員紹介/代表メッセージ)
この3つを、ふわっとではなく、できるだけ具体的に決めます。たとえば「毎月の月初に、社長が30分かけて口頭で話したことを、僕(業者)が原稿に起こして社長承認のうえ公開する」みたいな、動詞レベルの具体性まで降ろしてください。動詞レベルまで降ろすと、その運用が現実に回るかどうかがリアルに見えてきます。
もしここで「社長は毎月30分も時間が取れないかも」と分かったら、それは大事な発見です。「無理な運用設計を組んだサイトは、必ず止まる」。最初から動かない設計を組むくらいなら、「社長の30分は確保が難しい」と前提を置き換えて、別の運用パターン(伴走業者がインタビュー形式で素材を引き出す、四半期に1回の集中更新、社員のスマホ写真を業者が編集して投稿、など)を選ぶほうが100倍マシです。
運用設計を考えるときに僕がよく使うチェックポイントが3つあります。①社長の代わりに動ける人間が、社内に1人でも明確にいるか/②その人が「気が向いたら」ではなく「決まったタイミングで」動ける仕組みがあるか/③止まったときに、止まったことに気づける人がいるか──この3つを1つずつ確認してみてください。1つでも怪しい項目があれば、その運用設計はそのまま採用しないほうがいい。怪しい項目を埋める設計に組み替えるか、その項目を業者の伴走に外注するか、判断を分けるべき場面です。
シリーズ第5話で詳しく書きますが、忙しい社長でも更新が止まらないHP制作の進め方には、明確な型があります。それは「社長の負担を最小化したまま、思想や歴史を継続的に引き出す型」です。第1話の今は、「運用が止まるサイトは、止まる前提で設計してはいけない」ということだけ覚えておいてください。
余談ですが、僕がいちばん運用設計に凝るのは、社長さんが「半年後の自分」に会えるかどうかを、設計段階で確認しておきたいからです。半年後、サイトを見直したときに「あ、ちゃんと続いてるな」と感じられる社長は、ホームページを資産化できます。逆に、半年後に「あ、また止まってる……」と感じる社長は、ホームページを負債化させてしまう。サイトを資産にするか負債にするかは、運用設計の精度で決まるのです。
3つの整理が終わると、社長は「業者の話を選べる」状態になる
整理①〜③が、ノート1ページずつでもいいので形になったら、ようやく業者と話せる準備が整います。ここで初めて、世の中の業者の提案を「自分の物差し」で評価できるようになるのです。
これは、僕が現場でいちばん実感している変化です。整理が済んだ社長さんと、まだ整理が済んでいない社長さんでは、同じ提案を聞いても、まったく違う反応を返します。
- 整理が済んでいない社長:「うーん、A社のデザインも好きだし、B社の値段も魅力的だな……どっちにしようか」と、表面的な要素で迷います。決めきれません。
- 整理が済んだ社長:「A社の提案は、うちが一文に書いた『実現したい状態』とは方向が違うね。B社は値段はいいけど、運用設計の話が出てこない。じゃあC社にもう一度話を聞いてみるか」と、自分の物差しで判断できます。
整理①〜③は、社長を業者に対して「強気にする」ためのものじゃありません。「対等な土俵で話せるようにする」ためのものです。多くの社長さんが業者との打ち合わせで言葉を失うのは、知識が足りないからじゃない。自分の側の判断軸を、まだ言語化できていないからです。
逆に言えば、判断軸さえ言語化できていれば、ITの専門知識は1ミリも要らない。あなたが知っている自社のことと、誰に届けたいかと、どう運用するか──この3点だけ自分の言葉で言えれば、業者は社長の側に合わせて話を組み立て直してくれます。良い業者であれば、です。良くない業者は、整理した社長を煙たがります。それも見分け方として超優秀です。
整理が終わって業者を選ぶ段階に入ると、必ずぶつかるテーマが「どんな業者を選ぶべきか」です。これについては、すぐ次のH2でお話しします。シリーズ第2話「業者に丸投げして失敗する社長の共通点」とも直結する、すごく大事な話です。
「ホームページ 踏み出せない」を終わらせる、伴走型の最初の一歩

ここまでの整理が終わったら、いよいよ業者と話す段階です。でも、ここで多くの社長さんが、もう1段の選択ミスをしてしまいます。「ITに強い業者を探そう」とする選び方──これが、最後の落とし穴です。
ここから先は、「ホームページ 踏み出せない」を終わらせる「最初の一歩」を、業者選びの視点と、シリーズ次話への橋渡しとして、まとめていきます。
ITに強い業者ではなく「社長の話を聞ける業者」を選ぶ
多くの社長さんは、業者選びで「できるだけ最新技術に詳しい業者」「大手で安心できる業者」「IT系の知識が豊富な業者」を探そうとします。気持ちはよく分かります。プロに任せたい、外したくない、自分が分からない領域だからこそ強い相手に頼みたい──これは、誠実な経営者ほど陥る発想です。
でも、ここで提案させてください。中小企業の社長が選ぶべきは、「ITに強い業者」ではなく「社長の話を聞ける業者」です。
なぜか。理由はシンプルです。整理①〜③で社長が手元に持っているのは、「自社の物語」「届けたい一人の顔」「現実に回せる運用」──この3つです。これらは、最新フレームワークやSEOテクニックでは絶対に表現できません。技術ではなく、社長の言葉そのものを丁寧に引き出して、Webで表現する力こそが、中小企業のホームページに必要なものなんです。
ITに強いだけの業者は、技術を見せたい誘惑に負けがちです。「最新のヘッドレスCMSを採用しまして」「Core Web Vitalsの最適化を施しまして」と専門用語を使って、いかに自分が優秀かを示したがる。でも社長が知りたいのはそこじゃない。「うちの会社のことを、ちゃんと聞いてくれるかどうか」「うちの言葉を、うちのまま使ってくれるかどうか」です。
業者選びの面談で、僕がおすすめする「踏み絵」が1つあります。最初の30分、社長が一方的に自社のことを話して、業者がどれくらい質問を返してくるか──これを観察してみてください。
- 30分のうち、業者がほとんど話を遮らずに聞いて、後半に「あの話のここが気になりました」「もう少し聞かせてほしいのは……」と社長の言葉を拾うように質問してくる業者:◎ 候補にしてください
- 10分くらいで「では、デザインの方向性はどんな感じが」「お見積もりはこちらの3プランから」と業者の都合で話を進める業者:△ 一旦保留してください
- 社長が話している途中で「それは弊社の◯◯フレームワークで実現できます」と技術の話に持っていく業者:× 残念ですが、別の業者を探してください
この踏み絵をやると、面白いくらい業者が分かれます。そして、社長の話をちゃんと聞ける業者は、ホームページが出来上がったあとの運用も、社長の伴走者として続けられます。逆に、技術の話で進めようとする業者は、納品した瞬間に関係が終わるか、運用フェーズで噛み合わなくなって離れていくか、どちらかになることが多いです。
余談ですが、Novus Digitalというブランドを立ち上げるとき、僕は「技術に強い業者」というポジションを最初から捨てました。技術はあとからどうにでもなる。社長の話を聞いて、思想を引き出して、Webで表現する──このプロセスにこそ、僕が現場仕事の時代から磨いてきた「人の話を聞く力」が活きると確信していました。だから、Novus Digitalのサービスは、最初の30〜60分のヒアリングがいちばん重要視されています。逆に言えば、僕がいちばん時間をかけているのは「社長の話を最後まで聞き切る」ことです。地味な仕事ですが、これがホームページの全部を決めると、僕は信じています。
シリーズ第2話「業者に丸投げして失敗する社長の共通点」へ続く
──ここまで読んでくださった社長さんの中には、「業者を選んだあとの落とし穴」が気になっている方もいるはずです。
そう、踏み出せた社長が次にハマるのが「丸投げの罠」です。整理①〜③をやって、業者も慎重に選んだ。ここまで来たら、あとは業者さんにお任せしよう──そう思った瞬間、また別の失敗パターンが始まってしまうのです。
シリーズ第2話「業者に丸投げして失敗する社長の共通点」では、こういう話を扱います。
- 「丸投げしたら失敗する」が正論なのは分かっている。でも、現実には「丸投げせざるを得ない状態」に追い込まれてしまう社長が多い、その構造
- 業者に任せた結果、何も変わらないサイトが3年残ってしまう典型パターン
- 失敗の本当の原因は「丸投げ」ではなく「目的の共有が、最初の段階で行われていなかった」こと
- 社長が忙しいのに、無理なく目的を共有し続ける「整理してから任せる」型のやり方
第1話で扱った「3つの整理」は、第2話の「整理してから任せる」やり方の前段にあたります。第2話を読み終わるころには、業者との関係を「丸投げ」から「伴走」へ変える具体的な手順が、はっきりイメージできているはずです。
▶ 続きを読む(シリーズ第2話)
もし「業者選びの段階で、もう一段階、自分の現在地を確認したい」という方は、シリーズ第3話以降の受け皿の問題や安心の順番、そして社長が忙しくても進むHP制作の進め方に飛んでも構いません。シリーズはどこから読んでも分かるように作っていますが、第1話→第2話→第3話と順番に読むと、踏み出せない状態から動けるようになるまでの道筋が、もっとも自然に頭に入ってきます。
「ホームページ 踏み出せない」を終わらせる第一歩
最後に、この記事の総まとめと、僕からのご案内を1つだけ。
「ホームページ 踏み出せない」状態は、社長の意志の問題じゃありません。3つの掛け算──選択肢の過多×失敗への恐怖×業界側の設計不在──のせいです。これは、責められる話ではなく、解ける話です。
解き方も、特別な技術は要りません。社長が今日からノート1冊で始められる、3つの整理。
✅ 「ホームページ 踏み出せない」を解く3つの整理(再掲)
- 整理① 何を実現したいのか、を社長の言葉で一文に
- 整理② 誰に届けたいのか、を一人の顔で思い浮かべる
- 整理③ いつ・誰が・どう更新するのか、を運用設計に落とす
この3つが整ったとき、業者の話は「迷うもの」から「選べるもの」に変わります。あなたは、自分の物差しを手にした状態で、対等な土俵で業者と話せるようになります。「ホームページ 踏み出せない」状態は、ここで終わります。
そして、業者選びの最終アドバイスは、「ITに強い業者ではなく、社長の話を聞ける業者を選ぶ」こと。最初の30分で、業者がどれだけ質問を返してくるか──ここを観察するだけで、見分けがつきます。
──もし、3つの整理を「自分1人ではうまく書けない」と感じる場合、僕でよければご相談に乗ります。Novus Digitalの仕事の入口は、まさにこの「整理を一緒にやる」ところから始まります。第2話で扱う「整理してから任せる」型のいちばん最初の対話を、無料の初回相談で体験していただける形になっています。
「ホームページを作るかどうか」を決める前の段階の、「自分の会社の言葉を一緒に整理する」時間として、お気軽にお使いください。営業色は徹底的に排除しています。整理が終わったあと、僕に頼みたい、と感じてくれたらお願いされます。整理が終わった結果「ウチはやっぱり今は要らないな」と判断されても、それはそれで誠実な決断です。3つの整理が終わるだけでも、社長の頭の中はずいぶん軽くなります。
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「ホームページ 踏み出せない」状態を解く3つの整理を、僕と一緒に対話形式でやっていただけます。整理が終わるだけでも頭の中が軽くなります。営業色なしの初回対話、お気軽にどうぞ。
最後に、もうひとつだけ伝えさせてください。「ホームページ 踏み出せない」と検索してこの記事を最後まで読んでくれたこと自体が、すでに踏み出している証拠です。1万字以上の記事を、ここまでスクロールしてくれる社長は、本当に少ない。途中で離脱せずに、自分の「踏み出せない」を解こうとしてくれている時点で、あなたは確実に動き始めています。
あとは、ノートと1時間。お茶でも淹れて、整理①の「実現したい状態」から、書き出してみてください。最初の1文は荒くて構いません。書いて読み返して、書き直す。これを繰り返しているうちに、ある瞬間に「あ、これだ」という言葉が降りてきます。その瞬間が、踏み出せない3年が終わる瞬間です。
あなたの会社の「踏み出せない3年」を、ここで終わらせましょう。シリーズ第2話以降で、業者と一緒に進む段階に入っていきます。一緒に動いていきましょう。
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📚 シリーズ「岡山発・Web導線整理」全5話
▶ 第1話(いま読んでいる記事):踏み出せない社長へ|ホームページ作ったほうがいい、と言われ続けて3年
・第2話:業者に丸投げして失敗する社長の共通点
・第3話:集客できないHPの9割は「入り口」ではなく「受け皿」の問題
・第4話:問い合わせが来るHPに共通する「安心の順番」
・第5話:社長が忙しくても進むホームページ制作の進め方
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