📚 「順番」シリーズ(全5話)|今:第5話(完結)
第1話|踏み出せない社長へ /
第2話|丸投げで失敗する共通点 /
第3話|受け皿の問題 /
第4話|安心の順番 /
第5話|進め方(本記事)
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「ホームページを作ったほうがいい」と分かっている。
業者と打ち合わせも始めた。
でも、気がついたら3か月、半年、1年と進んでいない。そんな社長は、決して少なくありません。
これまで僕は、Novus Digital(ノバスデジタル)の伴走支援で、岡山県内の中小企業の社長と何十件ものホームページ制作を整理してきました。建設業、運送業、サロン経営、卸・小売、製造業。業種は違っても、進まない社長には共通の構造があります。
それは「時間がない」ではありません。もちろん時間がないのは事実です。ですが、本当の原因は別にあります。
本記事では、忙しい社長のホームページ制作が止まる3つの構造と、業態別の典型的な詰まり方4本、そして週1回・30分だけで前に進む「決める会」の型を、最後に 独習で1年半遠回りした僕自身の事業立ち上げ体験 と一緒にお渡しします。
この記事を読み終える頃には、「忙しいから後でいい」と先送りにしていたホームページ制作を、今週から動かすための具体的な型が手元に残るはずです。順番シリーズの完結篇として、第1話〜第4話の総括も後半でまとめます。途中から読み始めた方も、ここで全話の地図を持って帰ってもらえる内容にしました。
→ はじめての方へ:Novus Digital について(売り込みなしの考え方)
忙しい社長のホームページ制作はなぜ進まないのか|「時間がない」ではない3つの構造

「忙しくて進められない」を、僕は最初、文字通り時間の問題だと思っていました。だから業者として「短時間で終わる打ち合わせ設計」を提案する。それでも進まない社長を見て、はじめて気づいたことがあります。
進まない原因は時間の絶対量ではなく、「決める量」「質問の形」「進める仕組み」という3つの構造にありました。順に見ていきます。
進まない原因①「社長が決める量」が多すぎて疲れる
最初の構造は、判断量の集中です。
業者から届く確認メッセージを読み返してみてください。きっとこんな質問が並んでいるはずです。
一見「全部必要なこと」に見えます。ですが、これらを同時に1人の社長に投げると、何が起きるか。判断疲れです。
人間の判断力は、1日に使える総量が決まっているという研究があります。日中、人事も、営業も、現場対応もしている社長にとって、夜にこの6項目を一気に判断するのは、もう体力が残っていない時間帯の話なんです。
僕自身、この感覚を一番味わったのは事業立ち上げの準備のときでした。
本業のあと、夜の時間で独立に向けた学習を始めた。3か月集中すると決めて、食事と風呂と睡眠以外はパソコンの前に座ると決めた。けれど、結局カタチになるまで1年半かかりました。理由は、誰にも師事していなかったから。
例えば当時、僕は MQL(金融取引の自動売買プログラムを書く言語)を独習していました。動くプログラムが書けるようになるまでは、集中して取り組んで2〜3か月。文法を覚えて、サンプルコードを写して、エラーを潰して、動かすところまでは何とかたどり着きました。
ところが、そこからが長かった。書籍やWebの解説記事、動画で紹介されている各種プログラムの挙動を、見様見真似でほぼ9割再現できるようになるまで、結果的に2年ほどの試行錯誤が必要でした。MQL の文法そのものは独習で身につけられても、「何が良い設計で、何が悪い設計か」を判断する基準を、自分一人で組み立てるのに時間がかかったんです。
「次に何を勉強すればいいか」「この教材で本当にいいのか」「この方向性は合っているのか」。毎晩、勉強そのものより『何をやるか』を決めることに体力を使い果たしていました。学習が止まる夜が増え、3か月のはずが半年になり、1年になり、1年半になった。誰かに「この順番で学べ」「この本は読まなくていい」「この機能は飛ばせ」と判断してくれる人がいれば、たぶん同じカタチに半分以下の時間でたどり着いていたと思います。
これと同じことが、忙しい社長のデスクで起きています。
業者は「全部聞かないと進められない」と思って質問する。社長は「全部考えないと答えられない」と思って止まる。両者とも誠実なのに、結果として制作は止まる。判断量の設計が抜けているんです。
もう一歩踏み込むと、判断疲れは「どの判断も、間違うと致命的に見える」という心理的負荷からも生まれます。
キャッチコピー1つにしても「これで間違ったら、お客様に伝わらないんじゃないか」と頭をよぎる。トップページの色1つにしても「業界のイメージとずれて変に見えないか」と気になる。小さな判断のすべてが、社長の中で大きな判断と同じ重さで見えてしまう。これが判断量の重さを倍増させる仕組みです。
業者の側から見ると、「キャッチコピーの方向性」と「色のトーン」は同じレベルの確認事項に見える。でも社長の側からは、どちらも「うちの会社の顔をどう見せるか」という一大決断に感じられる。業者と社長の感じる重さの非対称が、進まない最大の温床になっています。
この非対称を解くには、業者が「決める内容」を「軽い・中・重い」に分類して、軽いものは業者側で決め切ってしまう、中程度のものは選択肢を絞って提示する、重いものだけ社長に聞く、という設計が必要です。全部を社長に聞く業者は、誠実に見えて、実は社長の判断疲れを量産しているのです。
進まない原因②「業者からの質問」が判断を要する形になっていない
2つ目の構造は、質問の形そのものです。
判断負荷を生む質問には、ある共通点があります。それは「答えにたどり着くまでに、社長が考える材料を自分で集めなければならない」という点です。
例えば「トップページのキャッチコピーは何にしますか?」という質問。一見シンプルですが、これに答えるには、社長は頭の中で次のことをやらなければいけません。
- うちの強みは何だっけ?
- どんなお客さんに来てほしいんだっけ?
- 競合と比べて何が違うんだっけ?
- キャッチコピーって、どんな雰囲気で書くものなんだっけ?
- 10案くらい考えて、その中から選ぶの?
ここまで全部やって、ようやく1案を返すことになります。これだけで30分から1時間。これが10項目並ぶと、1回の確認メッセージで丸1日分の判断労働になる計算です。
僕がこの構造に気づいたのは、飲食店時代にホームページ制作担当を任されたときでした。
本業の合間に、店のホームページを作る役を任されたんです。何を載せるか、どう書くか、どこに依頼するか、写真は誰が撮るか、公開後どう更新するか。全部を自分で考えなければならず、相談相手はいませんでした。
毎晩、店を閉めたあとに調べ物をして、結論が出ないまま寝て、翌朝には何も進んでいない。判断負荷が一人に集中したホームページ制作は、ただただ苦行でした。完成しても達成感より疲労感が勝って、結局その後は放置された記憶があります。
あのときに足りなかったのは、僕の能力でも時間でもありませんでした。「答えやすい形に分解された質問」です。
例えば「トップページのキャッチコピーは何にしますか?」ではなく、こう聞かれていたら、たぶん夜のうちに答えられた。
これなら、判断は「3つから選ぶだけ」。文章を考える労働は業者側が担っていて、社長は最終的な感覚の方向性だけ示せばいい。これだけで返信までの時間が10分の1以下になります。
進まないホームページ制作の現場では、この「質問の形を直す」だけで一気に動き出すケースが本当に多いのです。
もう一つ伝えておきたいのは、「答えやすい質問」を業者に要求するのは社長の正当な権利だということ。「ぜんぶこちらで決めます、教えてください」と言ってくる業者は、一見親切そうに見えて、実は判断労働を社長に丸投げしています。
本当に親切な業者は、自分のところで10案考えて3案に絞って、その3案をA/B/Cで提示してくれます。社長の脳に入れる情報量を、業者の側で意図的に絞ってくれる。これが「忙しい社長と組み慣れている業者」のサインです。
ホームページ制作の打ち合わせを始めるとき、最初の面談で「うちは忙しいので、A/B/Cの3択形式で質問してもらえますか」と一言伝えるだけで、業者の動きが大きく変わります。応じてくれる業者は伴走パートナーになり得る業者、応じてくれない業者は社長の負荷で進める業者。これだけで業者選びの大きな判断軸になります。
進まない原因③「進める仕組み」が気合任せで属人化している
3つ目の構造は、進め方そのものの設計不在です。
多くのホームページ制作の打ち合わせは、こんな形で始まります。
「じゃあ次は、お時間取れるときにご連絡ください」
「来週中には返事します」
「忙しくなければ来週末までに……」
このやり取りに共通しているのは、「いつ進めるか」がどちらにも決まっていないこと。両者ともに「忙しくなければ」「時間が取れたら」を前提に話している。これは進む仕組みが存在しないということです。
僕は本業で運送業に携わっていた時期があります。あの仕事は、机に座って勉強する時間がほぼゼロになる仕事でした。朝早くから始まり、夜は疲れて勉強する余力なんてない。それでも、必要に迫られて宅地建物取引士の勉強を始めたとき、「進める仕組み」を作るしかなかったんです。
答えは結局のところ単純で、気合ではなく仕組みで前に進むことに尽きました。
具体的には、Anki(暗記学習用の有料アプリ)を導入しました。手元の参考書と過去問の設問を1問1問、すべて自分で手入力して、Ankiの音声読み上げで聞き流す形にしたんです。「目を使わなくても耳で勉強できる」状態を、自分で作りました。
これで、家事の合間、夕食の片付けをしているとき、就寝前の布団の中、自宅の風呂上がりの時間。「目と手が空いていない時間でも、耳が空いていれば勉強できる」という仕組みが回り始めました。1日トータルで30分から1時間の勉強時間が、何もしなくても自然に積み上がっていく。机に向かうのは週末だけで済むようになりました。
大事なのは、これは「気合で続けた」のではなく、「忙しい生活に勉強が組み込まれる仕掛けを最初に作った」から続いた、という点です。Anki に入力する作業は最初の2週間で集中してやりきり、それ以降はもうボタンを押すだけで聞き流しが始まる。仕組みが立ち上がったあとは、意志の力をほとんど必要としない状態を作っていました。
つまり、忙しい人が動けるのは「時間ができたら」ではなく、「忙しい前提に組み込まれた仕組み」が動いているときなんです。
ホームページ制作も同じ構造です。社長の都合に合わせて「お手すきのときに」と委ねる方式は、忙しい社長ほど永遠に進まない。忙しい前提で組み込まれた進め方を、最初に設計しておく必要があります。
これが第3の構造、進める仕組みの不在。気合や善意ではホームページ制作は進みません。仕組みで進めます。
ホームページ制作の世界に置き換えると、これは「業者からの質問が、いつ・どの形で社長の手元に届くか」を最初に設計することに対応します。LINEで届くのか、メールで届くのか、共有ドキュメントで届くのか。社長が普段使うツールのどこに、どんな粒度で届くのか。これを最初に決めておけば、忙しい現場の中で「質問が届いたら30秒で答える」運用が回り始めます。
逆にこの設計を業者任せにすると、社長は気合で「時間を作って」返信し続けることになり、必ずどこかで折れます。進む仕組みは、最初の打ち合わせの30分で決まるのです。
業態別|忙しい中小企業社長がホームページ制作で詰まる典型パターン
進まない3つの構造を踏まえた上で、業態別にどんな詰まり方が起きているかを見ていきます。
業態によって「忙しさの形」が違うため、止まる場所も違います。自社に近いケースを探しながら読み進めてください。
建設・工務店 一人親方|現場直行直帰でメールが3日溜まる
最初は、建設業や工務店の一人親方の社長です。岡山県内でも、ホームページ制作を考える層として一番多いのがこの業態かもしれません。
典型的な1日はこんな形です。朝6時前に自宅を出て現場へ直行。日中は施工、合間に職人の手配や材料発注の電話。夕方17時に現場を撤収して、そのまま次の現場の見積もり立ち会いに直行。帰宅は20時、夕食を食べたら22時には寝る。パソコンの前に座る時間が、平日にほぼ存在しないのが特徴です。
こういう社長がホームページ制作を始めると、何が起きるか。
業者から週初めに送られた確認メッセージを、月曜は車内で開いて「あとで返そう」とそのままにする。火曜も同じ。水曜になって業者から「お返事お待ちしています」のリマインドが来て、初めて「やばい」と気づく。深夜2時、疲れた頭で適当に答える。後日その回答が原稿に反映されて読んで、「これじゃない」と感じるが、もう書き直しの判断負荷が重くて止まる。
この業態の社長に必要なのは、「日曜の30分」を最初から制作の時間として固定することです。
例えば日曜の朝9時から30分、家族との朝食前に書斎で。スマートフォンに繰り返しの予定として入れておく。業者には「日曜9時の30分以外は、平日返信が遅れます」と最初に宣言しておく。
こうすると業者は、金曜の夕方までに「日曜の30分で答えられる質問」を3つ以内にまとめて送るようになります。社長は日曜にそれを見て、A/B/Cで答えるだけ。3週間続ければ、ホームページの骨格が完成します。
気合で「平日のどこかで返す」と決めるのではありません。社長の生活で唯一、机に座れる30分を最初から取り分ける。これが建設業向けの仕組みです。
建設業の社長と話していると、もう一つ典型的な詰まり方があります。「現場で忙しいから業者に任せている」と思っているうちに、業者が方針を決めてしまっているパターンです。
3週間返信しないでいると、業者は仕事を止めるわけにいかないので、推測でデザインを進めます。施工事例の写真の選び方、文章のトーン、料金の見せ方、お問い合わせ導線の設計。社長が判断すべきだったことを、業者がベストの推測で進める。
4週目に社長がやっと確認すると、出来上がりに違和感がある。「これじゃない感」が強い。でも、書き直しの判断負荷を考えると、もう「これでいいです」と言ってしまう。妥協で完成したホームページは、公開後も社長の中で「自分の会社の顔じゃない」感覚が消えず、結局運用に身が入らなくなります。
この詰まり方を防ぐには、「日曜30分の決める会」を絶対に空けないこと。やむを得ず1週間飛ばすときも、業者に「今週は飛ばします、進行は止めて待ってください」と一言入れる。沈黙のまま3週間放置にしないことが鍵です。
業者にとって「社長から連絡なし」は最悪のシグナル。「社長が忙しいから今週は飛ばす」と先に言われた方が、はるかに進めやすい。飛ばす連絡こそが、進める仕組みの一部になります。
サロン・整体院 オーナー|施術中スマホ触れず夜は経理で返信できない
次は、サロンや整体院のオーナーです。一人施術や少人数経営で、社長自身がメインの施術者を兼ねているケース。
このタイプの忙しさは、建設業とは違う形をしています。
朝10時から夜19時まで、施術中はスマートフォンに触れない。施術と施術の合間の10分は、次のお客様のカルテ確認と着替えと水分補給で消える。退勤後は売上集計、予約管理、消耗品発注、SNSの投稿と返信。深夜23時にようやく一段落して、ふと業者からのメッセージに気づく。読む気力はもうない。
業者から「このキャッチコピー3案中どれですか?」と聞かれても、LINEを開く時間そのものが取れない。返信せずに3週間が経ち、業者側の進行が止まり、再開のための再ヒアリングがまた発生する。再ヒアリング自体が判断負荷を生むため、永遠のループに入ります。
このタイプの社長に必要なのは、「施術と施術の合間の10分でもLINEで答えられる質問の形」です。具体的には、業者から届く質問が次の条件を満たしている必要があります。
この3条件を業者と最初に合意しておくと、施術合間の10分どころか、お客様を見送った直後の30秒で返信が完了します。1日3往復のやり取りができれば、1週間で20回のキャッチボールが成立する。これだけ往復できれば、ホームページの中身は1か月で固まります。
サロン経営の社長には「施術と経理だけで一日が終わるからホームページは無理」と諦めている方が多いのですが、それは「業者の質問の形」に問題があるだけのことが多い。質問の形を変えるだけで、無理だと思っていた進め方が回り始めます。
もう一つ、サロンや整体院特有の詰まり方があります。それは「写真撮影の段取りがつかない」問題です。
サロン業では「施術スタイル」「お店の雰囲気」「施術者の人柄」を写真で伝えることが、ホームページの肝になります。ところが、写真撮影には施術中のお客様への配慮、撮影日の調整、自身の身だしなみの準備が必要で、忙しい施術合間ではどうしても後回しになる。
気がつくと「写真がないからホームページの公開が止まっている」状態になります。
この詰まりを防ぐコツは、「写真撮影の日を、ホームページ着手前に1日だけ予約する」こと。たとえ全部の素材が揃っていなくても、撮影日を先に固定すれば、その日に向けて自然と段取りが整います。撮影日が決まる→お客様の声を取る人を決める→お店を整える→着るものを決める、と逆算で動けるようになる。
この「逆算で動かす締切設定」も、業者の仕事の一部です。社長に「いつ写真撮影しますか?」と聞くのではなく、業者が「○月○日の14時、撮影日として押さえておきます。これに向けて準備しましょう」と提案する形。これだけで、無理だと思っていた撮影が3週間後に終わります。
卸・小売/運送業 中堅社長|営業も経理も現場対応も社長一人で進む暇がない
3つ目は、卸・小売や運送業の中堅企業の社長。社員10〜30名規模で、社長が営業の最前線も経理の判断も人事も全部見ている、という業態です。
このタイプの忙しさは、量が多いというより「割り込みが入り続ける」形をしています。朝、営業の見積もりに目を通している間に、現場から「機械が止まった」の連絡が入る。それを処理していると、税理士から決算の質問。それに答えていると、新規取引先からの電話。一日中スイッチングを強いられて、深い思考の時間が取れない。
このタイプの社長がホームページ制作で詰まる典型パターンは、「ホームページのことを考える優先度が、毎日下がっていく」ことです。営業も経理も現場も、明日締切のものばかり。ホームページは半年後でいい仕事として、毎日後ろに後ろに押されていく。気がつくと半年経過、業者から「進めましょう」の連絡が来てもまだ判断材料が頭に揃っていない。
このタイプに必要なのは、「決める量を分割する」仕組みです。社長が一人で全部判断する形をやめて、社内のWeb担当を1人立てて、社長は最終承認だけに役割を分ける。これだけで判断負荷が5分の1以下になります。
運送業の中堅社長の例だと、現場入りで社長が忙しい時期に、月1回の役員ミーティングの時刻に合わせて「ホームページ進捗30分」を組み込んだケースもあります。月1ではゆっくりに見えますが、「決める会」が確実に動けば月1でも完成します。動かないより遅くても確実に動く方が、結局は早いんです。
「社長が全部やらなければいけない」という思い込みは、中堅企業の社長に多い詰まり方の根本原因です。分割して任せる勇気が、忙しい社長のホームページ制作を進める鍵になります。
中堅企業の社長から「うちにWeb担当を立てる人材がいない」と言われることがよくあります。これも、よく聞いてみると「立てられない」のではなく「立てる役割設計が決まっていない」だけということが多い。
例えば、若手の事務員さんに「ホームページの社内窓口」を月10時間だけ任せる。本人の本業は事務のままで、ホームページ関連の業者連絡だけが追加される。最終的な方向性の判断は社長が30分で承認する。これだけで、社員1人あたりの業務量は10時間増えるだけ、社長の関与時間は月2時間以下に圧縮されます。
これを避けるには、担当者の本業の業務量を最初に「実時間で」棚卸しすること。「月10時間なら出せる」のか「実は今すでに残業40時間で限界」なのか。社長から見える担当者の表情と、実際の業務量はズレていることが多い。
もう一つの選択肢は、「社内で一番デキる人ではなく、本業に余裕がある人」を選ぶこと。事務員、若手、パートタイム勤務者。「業者からの質問を受けて、社長に伝える形に整えて、社長の判断を業者に返す」中継役だけなら、本業に余裕がある人でも務まります。むしろ、デキる人を選ぶよりも、その人の本業が止まらず、長期的にホームページ運用も回り続ける可能性が高い。
「ホームページ専任を採用する」のはハードルが高くても、「兼務で社内窓口を1人立てる」のはほとんどの中堅企業で実現可能です。ただし、その人選を間違えると、社長が抱えていた詰まりがそっくり担当者に移動するだけになる。
担当者の業務負荷も「忙しい前提で進む仕組み」の一部として、社長が責任をもって設計してください。中堅企業の規模なら、これが一番現実的な進める仕組みになります。
忙しい社長でも進む『週1・30分 決める会』の型|決める量・質問・宿題の設計

業態別の詰まり方を見たうえで、業態を問わず使える「進む型」を渡します。
これは僕が、Novus Digital で岡山県内の中小企業社長と一緒に何十本もホームページを完成させてきた中で、最後に残った最小限の型です。週1回・30分だけ「決める会」を固定する。それ以外の時間は、すべて制作側が前に進めます。
『決める会』でやること固定3点|目的1文/不安3〜5個/安心の順番
まず、「決める会」で何を決めるのか。これが最初に固まっていないと、30分はあっという間に雑談で終わります。固定する議題は3つだけです。
📋 「決める会」固定議題3点
- 目的を1文で確認する(「このホームページで一番達成したいことは何か」)
- お客様の不安を3〜5個に絞る(「ホームページに来た人が抱える不安・疑問は何か」)
- 安心の順番を確認する(「不安を消す情報を、どの順番で見せるか」)
1つ目の「目的を1文」。これは順番シリーズの第1話で扱った「3つの整理」の核です。「岡山県赤磐市で建築相談を受けたい人を集めたい」のように、業種・地域・対象・行動を1文に詰める。これがブレると、毎回の打ち合わせで議論が振り出しに戻ります。
逆に1文が決まっていれば、「この機能は必要か?」「この写真は要るか?」「このページは何を載せるか?」が、全部この1文と照らし合わせるだけで決まる。判断量が劇的に減るのはここからです。
2つ目の「不安を3〜5個に絞る」。これは順番シリーズ第3話で扱った「受け皿」の話です。お客様がホームページに来る前に抱えている不安・疑問・心配を、社長の言葉で3〜5個書き出す。「いくらかかるか分からない」「対応エリア外じゃないか」「断られるんじゃないか」のような、生身の不安を。
業者がそれを1ページ1不安の構造で並べていきます。社長は不安を出すだけ、設計は業者がやる。役割分割が綺麗に決まる議題です。
3つ目の「安心の順番」。順番シリーズ第4話で扱った「不安が消える順番でページを並べる」設計です。例えば「強み紹介→料金→お問い合わせ」の順だと押し売り感が出るが、「該当感→お客様の声→料金→お問い合わせ」だと納得して問い合わせまで進める。
この並びを、業者から3案出してもらってA/B/Cで選ぶ。社長は感覚で選ぶだけで、設計の根拠は業者が持つ。これも30分で決まります。
この3点だけを30分で確認できれば、1回の「決める会」で1つのページの骨格が完成します。トップページが1週目、サービスページが2週目、お問い合わせページが3週目、という形で、4〜6週で土台が揃う。
「忙しいからゆっくりしか進まない」のではなく、「忙しいからこそ、毎週確実に1ページずつ進む」という考え方です。
「決める会」の30分で気をつけるべきことが、もう一つあります。それは「議題3点を超えるトピックは、その場で出さない」こと。
現場では話が広がりがちです。「そういえばロゴも作り直したい」「ブログの更新ルールどうしよう」「SNSも連携したい」。話は楽しいのですが、これを30分で扱うと、本来決めるべき3点が決まらないまま終わります。
こうした追加トピックは、業者が「次回の議題候補」としてメモしておいて、別の決める会で扱う。議題を増やさない強い意志が、30分で進む鍵になります。
制作側が用意する『判断しやすい質問』の型|A/B/C一文字でOKまで分解
「決める会」が30分で終わるためには、業者側の事前準備が決定的に重要になります。社長に判断負荷をかけない準備とは、具体的にどういうことか。Novus Digital で実際に使っている型を3つ紹介します。
1つ目、「A/B/Cの3案+一行コメント」。
例えばトップページのキャッチコピー案を出すとき、業者は10案考えて、その中から3案に絞って提示する。残りの7案は社内で潰しておく。社長に見せるのは、必ず3案。「絞る」労働を業者が引き受けます。
これだけで、社長の判断時間は10分以下、返信は移動の合間の一文字で完了。10案考える労働は業者がもう済ませているから、社長の脳に入る情報量が3つだけになります。
2つ目、「叩き台先行・赤入れだけ」。
原稿が必要なときは、業者が先に叩き台を書いてしまう。社長は赤を入れるだけ、ゼロから書く労働は業者持ち。「正解の文章」を書く能力は社長にもありますが、忙しい社長に毎回ゼロから書かせるのは、判断負荷の塊です。
叩き台の精度が低くてもいい。社長は「これは違う、こう直して」と言えれば、それで方向性は伝わります。修正は2〜3回でOK、毎回直しの精度は上がっていきます。
3つ目、「次回までの宿題は1つだけ」。
30分の会の最後に、業者が「次回までに社長にお願いしたい宿題」を1つだけ提示する。「写真を撮影する場所を1つ決めてください」「お客様の声を1人、誰に依頼するか決めてください」のように、1週間に1つだけ。
「写真の場所、お客様の声、原稿チェック、業者選定の最終判断、ロゴデザインの確認」を全部一週間で課すと、社長は週末に判断疲れを起こします。1個に絞れば、平日の隙間で考えられる。これが「忙しい前提で進む」設計の実装です。
業者側にこの3つの型を要求するのは、社長の正当な権利です。「忙しいから、判断しやすい形で出してください」と最初に伝えることが、進むホームページ制作の最初の一手になります。
もう一つ、業者選びのときに確認しておきたいのは、「過去に忙しい社長と完成させた実績があるか」です。
業者の事例ページを見て、書かれているストーリーが「社長と毎週密に打ち合わせを重ねて〜」というスタイルだと、忙しい社長にはきつい伴走になる可能性が高い。一方で「社長の関与を最小限にして、判断ポイントだけ集中的に確認していただきました」というスタイルなら、忙しい社長と組み慣れている可能性が高い。
この見分け方は、契約前に重要な判断材料になります。業者の作風は、社長の生活との相性そのものです。
宿題は1個に絞る|『時間ができたらやる』ではなく『忙しい前提で進む』設計
もう一つ、忙しい社長のホームページ制作で僕が強く伝えたいのは、「時間ができたらやる」を捨てるという覚悟です。
多くの社長は、ホームページ制作を「時間ができたらやる仕事」のリストに入れています。営業の繁忙期が終わったら、決算が落ち着いたら、新規案件が一段落したら。
ですが、僕が見てきた限り、中小企業の社長に「時間ができる時期」は構造的に存在しません。繁忙期が終わると次の繁忙期の準備、決算が終わると新年度の計画、新規案件が一段落すると次の営業。常に何かが動いているのが、地方の中小企業の現場です。
だから「時間ができたらやる」は、「永遠にやらない」と同義になります。これは社長の意志が弱いからではなく、構造的にそうなる、という話です。
解決策は1つ、「忙しい前提で進む仕組み」を最初に作ること。具体的には、次の3つを最初の打ち合わせで決めてしまう。
この3つを業者と最初に合意しておけば、社長が忙しいまま、ホームページ制作だけが確実に進む状態になります。
逆にこの3つが決まっていない打ち合わせは、いくら社長がやる気でも、業者が優秀でも、長期戦の途中で崩れます。気合で支えるホームページ制作は、必ずどこかで折れます。仕組みで支えるホームページ制作だけが、最後まで完走できる。これが僕の経験則です。
運送業時代の Anki 聞き流しの話に戻ります。あのとき僕は気合で勉強していたわけではありません。「家事の合間や就寝前に、耳から自動で問題が流れてくる」状態を最初に作ったから、忙しいまま勉強が進んだ。気合の総量は変わっていません。むしろ忙しい時期ほど気合は減っていきます。それでも進んだのは、仕組みの方が気合より強かったからです。
ホームページ制作も、まったく同じ構造です。気合や意志ではなく、仕組みで進める。これが忙しい社長が完走する唯一の方法だと、僕は思っています。
もう一つ、忙しい社長が完走するために伝えておきたいのは、「進んでいる感覚」を毎週手元に残すことです。
30分の決める会が終わったあと、業者から「今週決まったこと・次週やること」のサマリーを1通もらう。例えばこんな形です。
このサマリーを毎週受け取ると、「先週から今週で何が前進したか」が言葉として手元に残る。これが、忙しい社長のモチベーションを支える小さな仕組みです。
「進んでいる感覚」がないまま3週間続くと、どんなに優秀な社長でも気持ちが折れます。逆に毎週「あ、また1つ進んだ」が積み上がれば、忙しい中でも続けられます。仕組みの一部として、進捗の見える化を業者に求めるのも、社長の正当な権利です。
順番シリーズ完結篇|独習1年半 vs 伴走で進める社長のホームページ制作

順番シリーズ完結篇の最後に、シリーズ全体の地図と、独習で進めるか、伴走で進めるかの判断軸を提示します。
第1話から第4話まで読んできた方も、本記事だけで来た方も、ここで全話の構造を頭に入れて帰ってもらえる内容にしました。
順番シリーズ全5話の総括|踏み出せない/丸投げ/受け皿/安心の順番/進め方
順番シリーズは、岡山県内の中小企業の社長がホームページ制作で詰まる5つの層を、順番に分解したシリーズでした。それぞれ独立して読めるように書きましたが、5話を通して読むと、ホームページ制作の全体地図が見えるようになっています。
📚 順番シリーズ 全5話の地図
| 第1話 | 踏み出せない社長へ 原因:選択肢過多×失敗恐怖。解法:3つの整理(実現したいこと/届けたい一人/運用設計) |
| 第2話 | 丸投げで失敗する社長の共通点 原因:整理せずに任せる。解法:整理してから任せる3ステップ |
| 第3話 | 集客できないホームページの9割は『受け皿』の問題 原因:入り口(流入)に頼り、受け皿(成約構造)が空っぽ。解法:受け皿の3要素設計 |
| 第4話 | 問い合わせが来るホームページの『安心の順番』 原因:納得は揃っているが安心が足りない。解法:不安が消える順番でページを並べる |
| 第5話 | 忙しくても進む仕組み(本記事) 原因:時間ではなく「決める量・質問の形・進める仕組み」の不在。解法:週1・30分の決める会+業者側の3つの型 |
この5層を上から順に整理していくと、ホームページ制作で詰まる全パターンがだいたいカバーできます。「踏み出せない」が解けないと「丸投げ」になり、「丸投げ」が解けないと「受け皿が空のサイト」になり、「受け皿」が解けないと「問い合わせの来ないサイト」になり、「安心の順番」が解けても「忙しくて進まない」で完成しない。
逆に言えば、この5層を順番に整理する伴走者がいれば、忙しい社長でも完走できるということです。
もし今、自社のホームページ制作が止まっていると感じるなら、まずどの層で詰まっているかを確認してみてください。詰まりの位置が分かれば、次の一手が見えます。
このシリーズで僕が繰り返し書いてきたのは、ホームページ制作の本質は「整理」であるということです。
整理してから踏み出す(第1話)。整理してから業者に任せる(第2話)。整理した内容を受け皿として配置する(第3話)。整理した不安を消す順番に並べる(第4話)。整理を進める仕組みを作る(第5話)。
5話を貫いている主語は同じ、「整理」です。流行や技術ではなく、社長自身の頭の中の整理が、ホームページ制作の核になります。
逆に、整理を飛ばしたまま「とりあえず作る」「業者の言う通りに作る」「テンプレートで作る」を選ぶと、完成しても運用が回らないホームページになります。完成がゴールではなく、運用が始まってから本番です。整理してあるホームページは、運用フェーズで強い。整理を飛ばしたホームページは、公開直後から放置されます。
順番シリーズは、その分岐点を社長と一緒に乗り越えるためのシリーズでした。完結篇まで読んでくださった方には、「整理」という1単語を、ホームページ制作の全段階を貫くキーワードとして持って帰っていただければと思います。
『独習で1年半』vs『伴走で半分以下』|コストと時間のトレードオフという選択
最後に、もう一度自分の話に戻らせてください。
冒頭で書いた、事業立ち上げの独習1年半の話です。
3か月集中すると決めて、食事と風呂と睡眠以外は全部パソコンの前に座る、と決めて始めた。モチベーションは最大値だったと思います。なぜなら、自分でやると決めたから。本業以外の時間で、生活を変えるつもりだったから。
それでも1年半かかったのは、誰にも師事しなかったからです。何を学べばいいか、どの順番で進めればいいか、この方向性で合っているのか、全部自分で判断していた。判断負荷の集中。これは、忙しい社長がホームページ制作で経験するのと、まったく同じ構造です。
MQL の独習がいい例です。動くプログラムが書けるところまでは2〜3か月。そこから書籍・Web記事・動画で見かける各種プログラムの挙動を、9割方見様見真似で再現できるまで2年。「できる」までは独学で行けたんです。ですが、その2年は、誰かに師事していれば確実に短縮できた時間でした。「なぜそう書くのか」「この実装はなぜ非推奨か」「次に学ぶべきはこれ」を、毎回自分一人で試行錯誤して当てに行く時間。あの遠回りの大半は、判断の代行者がいなかったことに起因していました。
結果的にカタチになって独立できました。それは目標があってモチベーションが高かったから。「やってやれないことはない」というのは、本当にそうだと今でも思います。
ただし、コストと時間のトレードオフがある。これを今、僕は痛感しています。
もし最初から誰かに師事していたら。教えを乞うていたら。お金は別途かかったかもしれませんが、1年半かかったところが半分以下、もしかしたら3分の1以下で済んだはずです。あの遠回りで失った1年は、二度と戻ってきません。
飲食店時代のホームページ制作担当の話を思い出します。あのときも僕は「全部自分でやる」体制で進めていました。誰にも相談せず、判断負荷を一人で抱え、苦行のように進めて、完成しても達成感がなかった。同じ独習でも、事業立ち上げのときは目標があったから完走できたが、飲食店時代は目標もなく、ただ押し付けられた独習だったからこそ苦行で終わった。
独習が悪いのではありません。目標とモチベーションが揃わない独習は、苦行になるということです。
多くの中小企業の社長にとって、ホームページ制作は「目標があってモチベーションが高い独習」になりにくい仕事です。本業で結果を出すための補助手段であって、ホームページ自体が目的ではないから。
だからこそ、伴走してもらう選択肢を持っておいてほしいんです。やる気だけで突っ走るより、誰かに伴走してもらうほうが早いし、成果物も良いものができる。これは僕自身が、独習1年半の遠回りで身をもって理解したことです。
「やってやれないことはない」のと、「やったほうが速いか/良いか」は別の話。コストと時間のトレードオフを、ご自分の状況で計算してみてください。忙しい社長の時間は、世の中で最も高価なもののひとつです。その時間を、独習の判断疲れに使うのか、本業の前進に使うのか。選択肢として、伴走という形を持っておくだけで、決断は楽になります。
順番シリーズ完結篇の最後に、もう一度だけ繰り返します。
ホームページ制作で詰まる原因は、時間の不足ではなく、判断量の集中・質問の形・進める仕組みの不在。これが3つの構造でした。
解法は、業態を問わず使える 「週1・30分の決める会」+「業者からのA/B/C質問」+「宿題は1個」。これを最初に決めて、忙しい前提で進む仕組みを作るだけで、ホームページ制作は完走できます。
そしてもう一段引いて見ると、独習で1年半遠回りするか、伴走で半分以下に短縮するか。これは社長自身のコストと時間の優先順位で決めることです。どちらが正しいというものではありません。
もし伴走という選択肢を検討してみたい方は、Novus Digital(ノバスデジタル)公式LINEで現状の整理から相談してください。社長の業種・規模・現在の詰まり方を聞かせていただいて、一番現実的な進め方を一緒に組み立てます。売り込みはしません。整理の途中で「自分でやれそう」と判断したら、そのまま自走でも構いません。
順番シリーズ全5話、ここまで読んでくださってありがとうございました。
このシリーズが、忙しい社長のホームページ制作を「いつか」から「今週から」に変える、最初の一歩になれば嬉しいです。
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