「ホームページを作ったのに、問い合わせが増えないんです。」
岡山県内の社長から、月に2〜3件はこういうご相談をいただきます。検索すれば「14個の改善施策」「問い合わせが増えない6つの原因」といった量産記事が、それこそズラッと並んでいる。読んでみると、書いてあることは全部正しい。フォーム最適化、お問い合わせ導線の再配置、コンテンツ追加、検索対策の見直し──どれも間違いではありません。
でも、僕がご相談を受けて最初に思うのは、いつも同じことです。
「順番が違うだけで、施策は効かないし、そもそも要らないことの方が多い」と。
この記事は、そういう「14個の施策を並べる前にやるべきこと」を、岡山県赤磐市のフクロモモンガ専門店「フクロモモンガ特別支援養成機関 ももラボ」さんとの実例で、まるごとお見せする話です。
同時に、僕自身が「きれいなだけで動かないホームページ」を何本も世に出してしまった懺悔と、それを止めると決めた日の話でもあります。長い記事になりますが、もしあなたが同じ悩みの渦中にいるなら、たぶん最後まで読み切れます。よろしければお付き合いください。
「ホームページを作ったのに問い合わせが増えない」を、量産施策で片づける前に
本題に入る前に、僕がなぜ「14個の施策」「6つの原因」を一覧で並べる量産記事を書かないのか、そこから説明させてください。これを共有しないまま事例の話に入っても、ただの「Novus Digital凄いでしょ」自慢で終わってしまうので。
「施策一覧」を読み漁っても、ホームページの問い合わせは増えなかった社長の話
これは複数の社長から実際に聞いた話を組み合わせた典型例です。
業界トップクラスのSEO会社が出している「問い合わせを増やす14施策」という記事を、ある社長は印刷してマーカーまで引いて読み込んでいました。フォーム改善、ヒートマップ、A/Bテスト、コンテンツSEO──全部、片っ端から試した。
結果はどうだったか。
「何ひとつ、刺さらなかった」というのが正直な答えでした。3か月、半年、と試し続けて、毎月少しずつ何かを変えて、レポートを取って、また少し変えて。それでも、問い合わせ件数のグラフは、横ばいのまま。むしろ「やってる感」だけが疲労として積み上がっていった、というのが正確なところでした。
理由はシンプルです。その社長のホームページは、そもそも「誰に・どう動いてほしいのか」が決まっていなかった。決まっていない状態でフォームを最適化しても、その先の景色は変わらない。お問い合わせボタンをいくら綺麗な色に変えても、押す動機がない人は押さない。コンテンツでアクセスを集めても、集めた先が用意されていなければ、人はそのまま帰っていく。
これは「14施策が悪い」という話ではありません。施策はどれも、文脈に当てはまればちゃんと効きます。でも、文脈を作るより先に施策に飛びつくと、必ずこういう「どれも空振り」の状態に陥ります。文脈を作るというのは、地味で、時間がかかって、外から見ても何が進んでいるのか分かりにくい仕事です。だから、社長も制作会社も、つい「分かりやすい施策」のほうに手が伸びてしまう。これが、ホームページから問い合わせが増えない構造のいちばん奥にある原因です。
この記事は「14施策」ではなく、1つの事例で見せていきます
ですので、この記事は量産記事に対抗して15個目・16個目の施策を提示する書き方をしません。代わりに、岡山県赤磐市のももラボさんとの実際の改善事例を、丸ごとひとつ、深掘りしてお見せします。
なぜ事例ひとつなのか。理由は、「自分の会社に当てはめて考えられる」のは、抽象的な施策一覧ではなく、生々しい事例だけだからです。「うちの会社もきっと、ももラボさんと同じところで止まっているな」と気付いてもらえる。気付いてもらえれば、そこから先のご相談は、ぐっと具体的になります。
もしあなたが「とにかく14施策を読んで明日から1個ずつ試したい」というタイプなら、この記事は合いません。先ほど挙げた業界大手のSEO会社さんの記事を読まれた方が早いです。
そうではなく、「自分のホームページが今どこで止まっているのかを、まず知りたい」という社長に向けて書きます。
なお、AIで「ホームページを5分で作れる」という言説について別記事で検証していますが、結論だけ先に共有すると、AI生成のホームページも、施策一覧と同じく「順番」が抜けたままだと動きません。気になる方は別記事「「ホームページはAIで5分」を真に受ける前に|時給で考える費用対効果と、基礎なき独学の3つの罠」もどうぞ。
事例|見学に来れば成約100%、それでも”手前で止まる”── 岡山ももラボの全記録
では、本題のももラボさんの事例に入ります。フクロモモンガという小さな夜行性動物の専門店ですが、業界が違っても「ホームページの問い合わせが増えない構造」はびっくりするほど共通しているので、ご自身の会社に置き換えながら読んでみてください。

半年かけてベタ慣れまで持っていった、「慣らしの深さ」が始まりだった
ももラボさんを語る前に、代表の方の歩みを少しだけ共有させてください。これがないと、後の「なぜホームページが必要だったか」が見えてこないので。
もともと、知り合いの和な雑貨ショップでフクロモモンガの存在を知り、ブリーダーから紹介で1匹を迎え入れたのが始まりだったそうです。多頭飼育の方が安定すると学んでペアにし、組み合わせ次第で生まれてくる子の柄が変わることに興味を持ち、遺伝についても勉強を本格化させた。
転機は、気の強いプラチナの女の子を迎えた時に訪れます。最初はかなりわがままで、人に慣れない。普通なら早めに諦めて手放してしまう個体を、半年かけて、ちょっとずつ触れ合いの時間を増やし、ベタ慣れまで持っていったそうです。この体験が、後のももラボの全てを決めることになります。
「慣らした状態でお迎えしてもらう」──業界には少なかったその選択肢を、自分が作ろうと決断したきっかけが、この半年でした。さらに広島のブリーダーや動物愛護ボランティアとの交流を通じて知識を深め、動物愛護のボランティア資格を約1年で取得。販売面でも、昼間しか見学できない既存の業界常識に違和感を抱き、夜間見学・夜間販売を独自に取り入れました。「実際の夜の姿が見れて良かった」というお客様の声が、信頼の土台になっていきます。
結果として、ももラボさんの「中身」は、ものすごく深いものになっていました。価格で勝負しているブリーダーが多い中で、「価格ではなく、本当に可愛がってくれる人にしかお迎えしてもらわない」というポリシーを貫いている。そこには、半年かけて1匹に向き合った人だけが持てる、強い覚悟がありました。
これだけの専門性と覚悟を持った専門店が、ホームページの問い合わせで止まる──ここから先は、信じがたい話のように聞こえるかもしれません。でも本当の話です。
「見学に来れば100%決まる」── でも、その手前で人が消える
ご相談をいただいて、最初の打ち合わせでこう聞きました。「現状、見学に来られた方の成約率はどれくらいですか?」
返ってきた答えに、僕は内心、息を飲みました。
「100%です。 見学に来てくださった方は、ほぼ全員、お迎えされています。」
普通の業界では、ありえない数字です。これだけ高い成約率の意味を、すぐに整理してみます。
これだけ聞くと、「むしろ何の問題があるんですか?」と感じられるかもしれません。僕も最初は、本当にそう思いました。これだけ強いものを持っている専門店なのに、何が起きているんだろう、と。
続いた一言が、すべてを物語っていました。
「でも、その手前で止まるんです。」
見学まで来てくれれば決まる。でも、その「来る」までで人が消えていく。Instagramの発信は継続していて、フォロワーからの反応もある。DMでの質問も来る。でも、そのDMから「では見学に行きます」までの間で、ふっと気配が消える。
その瞬間、僕ははっきりと感じました。
これはデザインの話でもページ数の話でもない。「形」を整える話ではなく、「形に至るまでの順番」の話だと。
ホームページが未整備のまま、SNSとDMだけで戦っていた現実
ヒアリングを進めるうちに、構造がはっきり見えてきました。当時のももラボさんが置かれていた状況は、こんな具合です。
これ、ももラボさんに限った話ではありません。岡山県内でご相談をいただく中小企業の社長や個人事業主の方の、相当な割合が同じ構造に置かれています。InstagramやFacebookでの発信は積極的、DMもそれなりに来る。でも、その先のホームページが「公式の入り口」として機能していない。
結果として何が起きるか。中身がいくら深くても、お客様に届くのは「断片だけ」になります。Instagramの投稿1枚、DMの返信1通。それぞれは丁寧でも、全体像が見えない。「この人に任せて大丈夫だ」と判断する材料が、どこにも揃っていない状態。
少し想像してみてください。あなたが大切な家族のために、初めての専門サービスを利用しようとしている場面です。Instagramの投稿はいくつか見ました。雰囲気は良さそう。DMで質問もしてみたら、丁寧な返信が返ってきた。次の一歩は「実際に行ってみる」ですが、その前に、おそらく多くの方は「公式の情報がまとまった場所」を探します。ホームページに飛んで、サービスの全体像、料金感、提供者の人となり、お迎えまでの流れを、ひと通り確認したい──これが、見学に行く前の、ごく自然な行動です。
その「公式の情報がまとまった場所」が無いと、人は迷ったまま離脱します。「なんとなく不安」を抱えたまま、別のブリーダーさんを探し始めるか、そもそも「今じゃないかもしれない」と判断を先送りする。熱量が冷めるのに必要な時間は、たった2〜3日です。1週間も経つと、最初の気持ちは戻ってきません。
そして、判断材料が揃わないまま「では見学に」と踏み込める方は、ものすごく少ない。だから「手前で止まる」が起きていました。「見学に来れば100%決まる」という強さを持っているのに、その手前で人が消えてしまう──これほど、もったいない構造はありません。
整えたのは”形”ではなく、見学までの「順番」だった
ご相談の方向性は、最初の打ち合わせの時点で決まりました。
「派手なホームページを作りません。やるのは、見学までの順番を整えることだけです。」
具体的にやったのは、次のようなことです。
大事なのは、新しいことを足したのではないということです。代表の方が現場で対面の方には100%伝えていることを、ホームページという媒体に「正しい順番で並べ直しただけ」でした。
「派手な仕掛け」「最新の検索対策」「凝ったデザイン」──そういうものは、ひとつも入れていません。代わりに入れたのは、「この方のお迎えに行くまでに、私たちは何を知っておくべきか」という、お客様の頭の中の順番に沿った情報だけです。
公開3週間後、モモンガーZさん(ももラボ代表)が穏やかに言ってくれた一言
新しいホームページを公開して、3週間ほど経った頃でした。ももラボの代表の方から、ご連絡をいただきました。
「このホームページで知ってもらえたら、上手くいく未来しか見えません。」
その一文には、焦りもなければ、誰かに勝とうとする強さもありませんでした。
ただ、ご自身がこれまでやってきたことが、正しく届いていく未来を信じられる──そんな静かな希望が、宿っていました。
具体的な数字としても、変化はすぐに表れました。
派手な数字ではありません。でも、「手前で止まっていたものが流れ始めた」という意味では、決定的な変化でした。これ以降、ももラボさんは公式ホームページを入り口として、ご自身の世界観を真っ直ぐ届けられるようになっています。
今後はブログ運用も、ももラボさんと共同で開始していきます。「慣らし」の現場、夜間見学の風景、お迎え後のサポートなど、対面でしか伝わっていなかった世界をホームページに継続的に積み上げていく予定です。フクロモモンガに興味のある方、岡山近郊で実物を見たい方は、ぜひももラボさんの世界を覗いてみてください。
なぜ僕は「きれいなホームページ」を作るのを止めたのか── 制作者側の懺悔
ここまでが、ももラボさんの事例です。本来であれば、ここでまとめに入って公式LINEへの導線で締めるのが一般的な事例記事の構成です。でも僕は、もう少しだけ続けさせてください。なぜ僕が、こういう「派手じゃない仕事」をするようになったのか。その背景にある、僕自身の懺悔の話を共有したいからです。
これがないと、「Novus Digital(ノバスデジタル)はそういう方針なんですね」で終わってしまう。そうではなく、なぜそうせざるを得なくなったのかを、生身の話として書きます。

「きれいですね。でも、これで本当に動きますか?」
昔の僕は、「作れること」そのものに自信を持っていました。求められれば形にする。依頼が来れば仕上げる。デザインも整っているし、構成も破綻していない。納品すれば、きっと喜んでもらえる。そう信じていました。
けれど、ある案件で、立ち止まることになります。
完成したサイトを前に、社長が静かにこう言ったのです。
「きれいですね。でも、これで本当に動きますか?」
その問いに、僕は即答できませんでした。
数字の未来を、描けなかった。
この導線で、問い合わせが増えると断言できなかった。
そして結果として、そのサイトは動きませんでした。アクセスはある。見た目も悪くない。でも、経営は何も変わらなかった。作ることはできた。しかし、会社を前に進めることは、できなかったのです。
あのときの悔しさは、今も消えていません。
「形を売る」ことと、「成果に近づける」ことは、まったく別物だった
あの社長の問いに即答できなかった経験から、僕の中で言葉が変わりました。
「形を売ること」と、「成果に近づけること」は、まったく別物だ──と。
形だけなら、極端な話、誰でも作れます。最近はAIを使えば短時間で立派な見た目のホームページが作れる時代にもなりました。でも、形が立派なことと、その先で「お問い合わせが増える」「商談が決まる」「会社が前に進む」は、別の話です。
成果に近づけるためには、形の前に「順番」を整える必要がある。順番を整えるには、社長と何時間もかけて、ご自身の歩み・お客様像・届けたい価値を雑談に近い形でヒアリングする必要がある。これは派手な仕事ではないし、ものすごく時間がかかります。でも、ここを飛ばしたままで作ってしまうと、必ず、僕が経験したのと同じ後悔が起きる。
受注が遠のいてもいいと決めた日
正直に言うと、今でも怖さはあります。「制作を止めます」と決める瞬間は、簡単ではありません。受注が遠のくかもしれない。「話が違う」と思われるかもしれない。理解されないまま終わる可能性だってある。
実際に、「作る会社なんですよね?」と戸惑った表情で言われたこともあります。期待されているのは「制作」だと分かっている。だからこそ、その流れを止めるのは勇気がいります。
それでも、止めます。
流れに乗って形だけをつくることはできます。けれど、その先で「動かない未来」が見えているのに、進めることはできない。また「動かない形」を増やしてしまうことの方が、理解されないことよりも、受注を逃すことよりも、ずっと怖いからです。
これが、僕が今、ももラボさんのような「派手じゃないけれど、確実に動くホームページ」の仕事を選んでいる理由です。
順番が違うだけで、ホームページの問い合わせは確実に変わる── 5つの整え方
ここまでお読みいただいて、「自分の会社も、ももラボさんと同じ『順番』で止まっているかもしれない」と感じていただけたとしたら、それが、この記事を書いた最大の目的です。
ただ、「順番を整える」と言われても、具体的に何から手を付ければいいのか、最初は誰でも迷います。Novus Digital では、これを5つのステップに分けて、それぞれ別の記事で詳しく解説しています。順番に読まれることを想定して書いた、いわば「順番シリーズ」です。
5話で読んでいただくと、ももラボさんの事例で僕がやったことは、これら5つの順番を、一人の社長と一緒に丁寧に踏んだだけであることが、はっきり見えてくるはずです。
もう少し具体的に対応関係をお伝えすると、こうなります。ももラボさんは「ホームページは作ったほうがいい」と言われ続けながらも、現場の忙しさに追われて第1話の『踏み出せない』状態を長く経験されていました。一度、別の制作会社に近いところまで進んだこともあったそうですが、そのときは第2話の『整理せずに任せる』に近い形で、結果的に手応えのないまま止まってしまっています。Novus Digital にご相談いただいた時点で、Instagram には強い発信があるのに第3話の『受け皿』が空っぽ──まさにこの状態でした。
そこから、代表の方の歩みと「慣らし」への向き合い方を引き出して第4話の『安心の順番』に並べ直し、忙しい現場の合間でも進められるよう第5話の『進め方』のリズムで打ち合わせを設計しました。派手なことは何ひとつしていません。順番シリーズで言葉にした5つの整え方を、ただ、一人の社長と一緒に丁寧に踏み直しただけです。
もしあなたが今、ホームページの問い合わせが増えなくて困っているなら、まずは第1話から順番に読んでいただくのがおすすめです。「うちは第3話の受け皿の問題かも」「うちは第2話の整理が抜けているな」と、ご自身の会社の現在地が見えてきます。現在地さえ分かれば、何から手を付ければいいかは、ほとんど自動的に決まります。
「形を売る」ことを辞めた制作者として、これからのご相談に思うこと
長い記事をここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。最後に、これからご相談を考えてくださっている方へ、ひとつだけお伝えしたいことを書いて終わります。
ご相談の温度感は、「ちょっと話を聞いてほしい」で大丈夫です。
ホームページの問い合わせが増えないとお悩みの社長は、たいてい「もう色々試したのに、何が悪いのかも分からない」状態でいらっしゃいます。それを整理しないまま「では制作の見積もりを」と進める制作会社のやり方は、僕には合いません。
まずは公式LINEで、今のお悩みを言葉にしていただくところから始めましょう。僕の方で、現状の整理と、判断材料になる視点をお返しします。そこで「ご自身でも進められそうだ」と感じられたら、それで大丈夫です。無理に制作のお話に進めることは、絶対にしません。
派手な仕事ではありませんが、「動かないホームページ」を世に増やさないことが、僕がこの仕事を続けている、たったひとつの理由です。あなたのホームページが、ももラボさんのように「上手くいく未来しか見えません」と言ってもらえる場所になるよう、お手伝いできれば嬉しく思います。
長文にお付き合いくださり、ありがとうございました。

