2026年6月16日。日銀が政策金利を0.75%から1.00%に引き上げました。
1995年以来、31年ぶりの水準だそうです。
ニュースが流れたその夜、テレビでアナウンサーが「住宅ローンへの影響は——」と語るのを聞きながら、僕はふと思いました。
「中小企業の社長さんは今、何のコストを見直しているんだろう」
住宅ローンを持つ会社員の方には直撃の話です。でも中小企業の経営者にとっては、利上げはもっと静かに、でも確実に効いてきます。借入金の利払いが少し増える。資金繰りにじわじわとプレッシャーがかかる。そのなかで「どのコストを守り、どの支出を組み替えるか」という判断が、これまでよりずっと重要になってきます。
今日は、そのコストの話をしたいと思います。
具体的には「広告費」の話です。
毎月、広告費として数万円から数十万円を払い続けている会社さんは少なくありません。リスティング広告、グルメサイトの掲載枠、求人媒体、チラシの折り込み——形は様々でも、「払い続けないと止まる」という構造は共通しています。
この記事は「広告費をやめましょう」という話ではありません。「ホームページを作りましょう」という営業でもありません。コストが上がり続けるこの時代に、中小企業が「集客をどう設計するか」を、僕の飲食店長15年の実体験と、今の伴走者としての視点から、正直にお話ししたいと思います。
利上げ1%、その日に「広告費」の話をしたい理由

利上げは、ある意味でいい目覚まし時計になりました。
「コストが上がる」という話は、利上げよりずっと前から続いていました。原材料費、光熱費、最低賃金、社会保険料。そこに借入金の利払いまで加わります。この複合的なコスト増の時代に、毎月払い続けている費用を一度立ち止まって見直すこと——それが今回のテーマです。
特に「広告費」は、払い続けることが当たり前になっているぶん、見直しにくいコストの代表格です。でも、少しだけ立ち止まってみてください。あなたが毎月払っているその広告費、止めたら翌月どうなるか、考えたことはあるでしょうか。
金利が上がる時代に、すべてのコストを問い直す必要がある
飲食店の店長をやっていた頃、炭火をウリにしているお店で「炭」を仕入れていました。最初は適正な値段でしたが、年を追うごとにじわじわと上がっていきました。
理由はいつも変わりました。「円安だから」「○○国の輸出規制で品薄になったから」「震災の影響で」。でも値段が下がることは、ほとんどありませんでした。円安の時も上がり、その後に円高になっても「今度は別の要因で」と、また上がる。保険料も上がりました。最低賃金も——これは働く人にとって必要な上昇ですが、雇う側にはコストとして効いてきます——10年単位で見ると300円以上は上がっています。光熱費も、仕入れ単価も同じでした。
あの頃から感じていた実感があります。「どこまで行っても、コスト高になる未来しかない」
利上げのニュースを聞いた日、そのことを改めて思い出しました。
利上げ1%という数字より、「コストが増え続ける流れはまだ終わらない」という現実の象徴として、このニュースを受け取りました。そしてそのタイミングで、ふと気になったことがあります。
以前、知り合いの運送会社の話を聞きました。社員の採用のために、毎月かなりの費用をかけているそうです。職安だけではなく、複数の求人媒体に同時に掲載している。詳しい金額は聞いていませんが、数十万単位の話でした。
「そのお金、止めたらどうなりますか?」とお聞きしたとすれば、おそらくこう返ってくるはずです。
「止めたら翌月から応募がゼロになる」
これが広告費の本質です。払い続けている間だけ、効果がある。払い続けることをやめた翌月、効果もなくなる。川に水が流れ続けるのと同じで、流れを止めた瞬間に川は干上がります。「フロー型のコスト」と呼んでいいでしょう。
コストが増え続ける時代に、このフロー型のコストを抱え続けることの経営リスクを、今日は正直にお話ししておきたいと思います。
コストが増え続ける時代に、すべての支出が「フロー型」だとしたら——。払い続けている限りは集客できても、何かの理由でキャッシュフローが悪化した瞬間、すべての集客が止まります。これは、経営の根っこにある集客基盤を、「お金を払い続ける」という一点だけに依存しているということです。
もちろん、広告費がムダだとは思っていません。フロー型の集客には即効性があります。でも、利上げで借入コストが上がり、最低賃金も光熱費も上がり続けるなかで、集客の「すべて」をフロー型に頼り続けることを、ただ惰性で続けていいのか——そこを問い直すのが、今日の話の核心です。
もうひとつ付け加えておきたいことがあります。フロー型コストは「効果が見えやすい」という特性を持っています。広告を出せば翌月には来客数が増える。求人媒体に載せれば翌週には応募が来る。その「見えやすさ」が、フロー型への依存を深めていきます。成果がすぐに確認できるからこそ、「払い続けることが正解だ」という錯覚が生まれやすいのです。
これに対して、ストック型の集客——ホームページのコンテンツや顧客からの口コミ——は、成果が見えるまでに時間がかかります。だから「本当に効いているのかよく分からない」という不安とともに続けていくことになります。でも、3年後・5年後に振り返った時、どちらに経営の安定があるかは明らかです。
広告を止めて翌月に集客ゼロになる会社と、ホームページが24時間365日集客を続けている会社では、コストが増え続ける時代の「耐久力」が根本的に違ってきます。
「止めたら翌月ゼロ」の広告と「止めても残る」HPの構造的な差

フロー型とストック型の違いを、頭では理解していても、実感するのは難しいかもしれません。僕自身の体験で、この差を感じた話をさせてください。
飲食店の店長として別の店舗に異動してきた時、最初に取り組んだのが販促費の見直しでした。
そのお店は飲食店向けの集客媒体の、かなり高い掲載枠を定期契約していました。毎月それなりの額が飛んでいきます。費用対効果を確認したのですが、「高い枠で集客できているのか」というより「惰性で続けている」側面が強い状態でした。
そこでまず、その枠を縮小しました。代わりに、Twitter(現X)とFacebookのページ運営、メール配信、誕生日DMの送付、店内イベントの企画(イベントカレンダー、おやじ会員制度、キッズイベントなど)に切り替えました。
メニューやPOPを作るスキルは、必要に迫られて深夜に独学で磨きました。外注費をかけず、自分でできることは深夜残業で全部やりました。売上が下がっているところへの異動だったので、大きく盛り返すところまではいきませんでした。でも、イベントの時には店が盛り上がるようになりました。常連さんのことを把握して、「あの人の誕生日が来月だな」と先回りして動けるようにもなりました。
一方で、面白いことに気づきました。Twitterのフォロワーはかなりのペースで伸びて、一時期は岡山県のローカルランキングで10位前後にも入ったほどでしたが、正直なところ、その数字がそのまま来店につながっていたかというと、あまりそうでもなかったのです。数字だけが積み上がって、実際の集客にはなかなかつながらない——そういう空回りの感覚がありました。
そのことに気づいてから、やり方を変えました。フォロワーを増やすことより、「店長の顔が見えること」を重視するようにしたのです。チラシの裏に、自分がなぜこの仕事をしているか、どんな経緯でこのお店に来たか、そういうエピソードをびっしり書いて配りました。するとそのチラシが驚くほど反応を生んで、前年比で売上が大きく伸びた時期がありました。
5年後のコスト比較で見えてくること
この経験から学んだことがあります。広告費という「フロー型のコスト」は、払っている間だけ働きます。でも「誰がなぜやっているか」を伝えるコンテンツ——ホームページや記事——は、一度作ったらずっと残り続けます。
少し数字で考えてみましょう。
月に5万円の広告費を5年間払い続けたとします。合計300万円のコストがかかります。でも、広告を止めた翌月から、流入はゼロに戻ります。お金が出ていくのに、資産は何も残りません。
一方、月5万円相当の投資をホームページのコンテンツ(記事作成・改善・設計)に向けたとします。最初の1年は正直なところ、成果はほとんど出ません。検索エンジンに認識されるまで数ヶ月かかり、ページが育つまでさらに時間が必要です。
でも2年目、3年目と積み重なるにつれて、検索から訪れる人が少しずつ増えていきます。投資を止めても、コンテンツが残り続ける限り、集客の可能性は生きています。300万円が「消えるコスト」ではなく「育つ資産」に変わっていくのです。
もうひとつ大事なことがあります。ホームページのコンテンツは、「あなたがなぜこの仕事をしているか」「この地域でどんな課題を持つお客さんのために動いているか」を伝える場所として機能します。これは広告ではできないことです。広告は「何を売っているか」を伝えることは得意でも、「なぜやっているか」を伝えることは苦手だからです。
飲食店長時代に、自分のエピソードを書いたチラシが前年比120%の反応を生んだ経験は、今も仕事の根っこにあります。「誰が何を売っているか」より「誰がなぜやっているか」が伝わった時に、人は動きます。ホームページは、その「なぜ」を永続的に語り続けられる場所です。広告費を使って「今月の割引キャンペーン」を伝えることと、ホームページで「うちの仕事への姿勢と思い」を伝えることは、集客の質がまったく違ってきます。
どちらが正解かは、業種やフェーズによって違います。でも「コストが増え続ける時代」に長期的な集客基盤を持つことの価値は、利上げのニュースが出た今こそ、改めて考えるべきタイミングだと思います。
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正直に語る、HPの限界——「すぐ稼げない」だから今すぐ始める

ここは正直に言います。
ホームページを作ったからといって、翌月から問い合わせが急増することは、ほとんどありません。
Googleに認識されるまでに数ヶ月かかります。検索結果の上位に表示されるようになるまでに、早くても半年から1年、業種によっては2〜3年かかることもあります。「そんなに待てない」と思うかもしれません。
でも少し待ってください。「ホームページに時間がかかる」という前提で考えると、今すぐ始める理由が見えてきます。
成果が出るまでに本当にどのくらいかかるか
以前、岡山県内の大手企業の社長さんから相談を受けたことがあります。開口一番にこう言われました。「ウチはWebというんかネット?が全く動いてないんじゃ」と。
話を聞いてみると、数年前にホームページ制作会社に依頼して「ウン十万」かけて作ったものの、運用も更新も全くできていないとのことでした。実際のサイトを見てみると——最後のお知らせ記事は3年前。ページのあちこちに「カミングスーン」という文字。問い合わせページへの導線もよくわかりません。
「更新は身内(親族)に任せているんじゃけど、身内ってのもあって甘くてな。なかなかこっちをやってくれん。身内だからあまり強く言えんし」
このケースに何が起きたのかというと、シンプルに言えばこういうことです。「作ることが目標になって、使うための設計がなかった」。ホームページは作ったけれど、誰に何を伝えてどう問い合わせにつなげるか、という設計がないまま完成させてしまった。だから更新もできない、成果も出ない、放置されるだけになってしまったのです。
別のエピソードもあります。懇意にしている車屋さんに、ホームページ作成を提案しに行ったことがあります。「絶対に喜んでもらえる」と思って伺ったのですが、お話を聞いて驚きました。以前ポータルサイトに載せていたことがあるそうです。でもそこからのお客さんが——クーポン目当てで来る、値引き要求がひどい、信用力に欠ける——といった問題が続いて、結局撤退したというのです。
「ウチはネット客が信用できないからやめたんです」
これを聞いた時、僕は気づきました。ポータルサイトが悪かったのではありません。「誰に来てほしいか」という設計がないまま、ただ集客数を増やそうとしたことが問題だったのです。「来てほしい客層を絞り込んで、その人たちに響くメッセージを届ける」という設計がなければ、Web集客はむしろ望まないお客さんを引き寄せる装置にもなりかねません。
ここで言いたいのは「ホームページは危ない」ということではありません。逆です。設計なしのホームページは確かに機能しない、または逆効果になりかねない。だからこそ、「設計から始めて、今すぐ作り始める」ことが重要なのです。
3年後に「あの時始めていれば」と言わないためには、今日動くしかありません。成果が出るまでに時間がかかる——だからこそ、今日から設計を始めて、今日から積み上げていく必要があります。
「ホームページに何年もかけて効果を待つのは現実的じゃない」という声も聞きます。確かにそうです。でも視点を変えてみてください。今から3年後の自分を想像した時、「3年前にホームページへの投資を始めておいてよかった」と思う未来と、「3年前も集客媒体に払い続けていたけれど、止めた今は集客がゼロだ」という未来、どちらを選ぶでしょうか。
時間がかかることへの不安は理解できます。でも「時間がかかる」ということは、裏を返せば「競合他社もなかなか手をつけない」ということでもあります。今すぐ始めた会社と、あと2年様子を見てから始める会社では、3年後に圧倒的な差がついています。ホームページへの投資が「効果が出るまでに時間がかかる」という事実は、今日始めることの最大の理由になるのです。
利上げ時代の集客コスト再設計——広告費を「削減」でなく「移行」する

ここで誤解してほしくないのは、「広告費はムダだからやめろ」という話ではない、ということです。
広告費には広告費の役割があります。新規事業の立ち上げ期、新商品の認知拡大期、短期間で集客したい繁忙期——こういった局面で広告は有効です。
僕が言いたいのは「削減」ではなく「移行」です。
今払っている広告費の一部を、ホームページへの投資(コンテンツ作成・記事更新・設計改善)に少しずつ移していく。今すぐ全部やめる必要はありません。でも「集客コストのすべてをフロー型に頼り続ける状態」からは、少しずつ脱していきましょう。
HPとコンテンツへの投資を「複利」で見る
広告費の効果は、ある意味で「単利」に近いものです。月5万払えば月5万分の効果。月10万払えば月10万分の効果。止めれば止まる。支払額と成果が比例する、シンプルな関係です。
一方、ホームページへのコンテンツ投資は「複利」に近い動きをします。
1本の記事を書いたとします。最初の3ヶ月はほとんど検索されません。でも半年後、同じテーマの2本目の記事を書くと、1本目と合わせてGoogleが「このサイトはこのテーマに詳しい」と認識し始めます。1年後には、10本のコンテンツが相互に関連付けられて、検索での存在感が格段に上がります。
積み上げた数に比例して、ではなく、積み上げた数に倍率がかかって成果が出る——これが複利の構造です。
飲食店長時代に、集客のための本を読み漁った経験があります。月に6回しかない休みのうち、4回は本屋を回るような時期もありました。そうして学んだことのひとつが「告知ではなく関係性が集客する」という考え方でした。一度きりのチラシより、毎月届く誕生日DMのほうが来店率が高い。集客媒体の掲載情報より、店長の顔が見えるSNSの投稿のほうが「また行きたい」と思ってもらえる。どれも「積み重ね」があって初めて効いてくるものでした。
ホームページのコンテンツは、その「積み重ね」をWebの世界で実現するための道具です。一度書いた記事は、削除しない限り24時間365日、誰かが検索するたびに存在し続けます。広告費を止めた翌月に集客がゼロになるのとは、根本的に構造が違うのです。
では具体的にどう「移行」すればいいのでしょうか。
一気に全額を移す必要はありません。たとえばこういうイメージです。
コストが増え続ける時代の経営は、毎月の支出をどう削るかだけでなく、「将来的にどのコストが不要になるか」という逆算の視点が必要だと思っています。
広告費がゼロになる未来を目指すわけではありません。でも、「止めたら翌月ゼロになる集客に100%依存している」状態から、「自社のホームページとコンテンツが集客の一部を担ってくれる」状態に少しずつ移行していくこと——それが、利上げ時代の集客コスト再設計の本質だと思います。
具体的に何から始めればいいか。最初のステップは、今あるホームページを「集客の設計図」として見直すことです。誰に来てほしいか、何を伝えたいか、どう行動してほしいか——この3点が明確になっていないホームページは、コンテンツをどれだけ増やしても、望む集客にはつながりません。まず設計を整えることが先です。
設計が整ったら、次はコンテンツの積み上げです。月1〜2本のペースで、自社の強みや事例、よくある相談内容などを記事にしていきます。最初の半年は検索からほとんど来ません。でも1年後、2年後に振り返ると、確実に変化が出てきます。それが「複利」の感覚です。
飲食店長時代に学んだことを、今もWeb集客で繰り返しています。店の集客本を読み漁り、試して失敗し、また試す——その積み重ねが、あの頃の自分を作りました。今も同じで、ホームページとコンテンツへの投資は「すぐに結果が出ないから意味がない」のではなく「今は目に見えないけれど、着実に積み上がっている」ものです。それを信じてコツコツやり続けること。それが、利上げ時代に中小企業の経営者が持つべき、集客への向き合い方だと思っています。
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まとめ:コストが増える時代こそ、集客の「資産」を持つ

日銀が金利を1%に上げたニュースは、経営者にとってある問いを突きつけました。
「あなたの集客コスト、コストが増え続けても、今のままで持続できますか?」
この問いに対する僕の答えは、「持続できるように設計を変えていく必要があります」というものです。
フロー型のコストだけに依存した集客は、キャッシュフローが悪化した瞬間に崩れます。毎月払い続けることで維持されている集客は、「払えなくなったら終わり」という脆弱性を持っています。
ホームページを「集客の資産」として持つことは、その脆弱性を補う試みです。
繰り返しになりますが、今すぐ成果が出るわけではありません。先ほどの体育会系の社長さんが、ウン十万かけて作って3年放置してしまったサイトのように、作って放置してしまっては意味がありません。設計なしに作っても、望まないお客さんが来るだけかもしれません。
でも、「誰に何を伝えてどう行動してほしいか」という設計を持って、コツコツとコンテンツを積み上げていく——その継続こそが、3年後・5年後に「広告費をかけなくても問い合わせが入ってくる」状態を作る唯一の道です。
コストが増え続けるこの時代に、短期の成果だけを追う集客と、長期の資産を育てる集客、両方を少しずつ持っていく。それが、利上げニュースが出た日に、僕が経営者の皆さんにお伝えしたかったことです。
「広告費を払い続けるか、ホームページに投資するか」ではなく、「今の広告費を維持しながら、ホームページの積み上げも少しずつ始める」——それが、コストが増える時代に中小企業が取れる、最も現実的な集客戦略だと思っています。
まず最初の一歩は、自社のホームページを「今、誰が見ているか」「どんな問い合わせが来ているか」を確認することです。それだけで、現状の課題が見えてきます。
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